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繚乱〜参

「やっと、触れられる」
「数刻前にも触れたろう?」
「私は、ずっと、もっと、近藤様に触れていたいんです」
近藤は杯を傾けながら、朧月の肩に腕を回し、ぐいと引き寄せる。
「俺もだ」
身を寄せ合う二人にほっとしたのか、ふと見ると紅葉が部屋の隅でうとうとし始めている。
「紅葉」
朧月が急いで紅葉に走り寄り、小さな体を抱え上げると、近藤は座布団を並べて布団替わりにする。
朧月の着ていた打掛をゆっくりかけると、紅葉は着物を握り締めてすやすやと寝息をたてる。
「頑張ってくれましたから…とても」
「そうだな」
まるで母親と父親の様に朧月と近藤が紅葉の眠りを見守る。
「近藤様」
朧月が紅葉に向けていた目を近藤に向ける。
同じ様に近藤の目も朧月に向く。
紅葉が眠る、そこから少し離れた所で、朧月と近藤は口付けを交わす。
近藤から、朧月から、どちらからともなく。
「ここでは、駄目、ですね」
朧月の濡れた目と声。
「そうでもない」
近藤は、熱混じりの声でそう囁くと、向かい合わせに座る朧月を自分の足の上に抱え上げる。
「着物の裾と足を…そう…」
「近藤様…私」
「俺は、朧月、お前が欲しい」
向かい合わせ、近藤の足の上に乗る形で露わになった朧月の足に近藤の手が触れる。
互いの下肢、互いの温度が伝わる程に密着する肌。
「私だって、同じです…近藤様」
朧月は近藤に口付けながら囁く。
こんなに、誰かを欲しいと思った事はありません。
あなたは、私の知らない私を幾つも見付けてくれる。
二人の時間は、真一郎と東雲、眠りこけた紅葉を気にしながらではあったが、それでも満たされて過ぎて行った。
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