繚乱〜参
「呑みすぎた…」
近藤は東雲が戻るのを見てからそう言って立ち上がる。
「お前にしてはまだまだだろう?早くお戻りよ、酒はあるんだから」
「厠くらいゆっくり行かせて欲しいものだがな、東雲、その我が儘息子を頼む」
「あらまあ、はいはい。ごゆっくり、旦那」
近藤と真一郎の息の合った掛け合いに東雲は笑いを堪えながら真一郎の相手に戻る。
部屋を出た近藤が一息吐き、辺りを見回すと、紅葉がひょこっと顔を出して手招きする。
気付かれてはいけないのだろう、慎重な紅葉の様子にそう思った近藤は、何食わぬ顔で紅葉の後を追う。
本当に厠へ立ち寄った後、何回か角を曲がり、階段を一つ降りた先で、近藤はようやく紅葉に遭遇した。
「主様、こちらへ」
紅葉はそう言うが早いか、すぐ側の襖を開いて自分ごと近藤を部屋に押し込んで、また素早く襖を閉じる。
「紅葉、ここは一体」
「そちらの奥へ」
小さく紅葉に促されて近藤は閉じた襖のすぐ奧にある襖を開く。
刹那。
近藤の胸に誰かが飛び込んだ。
一瞬驚いたが、近藤にはそれが誰なのかすぐに分かり、細い体をぎゅうと抱き締めた。
「まさかこんな暗い部屋に呼ばれるとは思わなかったぞ、朧月」
「…ここは私が使っている回し部屋です…ここなら誰も来ません」
朧月越しに布団が敷かれているのを目にした近藤は成る程と納得する。
太夫は逗留する客ばかりではなく一時の客も相手にする。
それを「回し」と言い、それ専用の部屋もあるのだ。
「だが、それなら客が来たら」
ふと気になって近藤が体から朧月を離しながら言う。
朧月は濡れた目で近藤を見ながら囁く。
「今日は回しを取らないと、先に紅葉に伝えて貰っています…だから」
近藤様が、宜しいなら、ここで、私を。
朧月が言葉を終えるのと、近藤が朧月の唇を塞ぐのと、どちらが早いかは分からなかった。
乱雑に着物を脱ぎ捨てて襦袢姿で布団に倒れ込むと、そのまま、朧月は近藤をすんなりと受け入れて、近藤も求められるままに朧月を組み敷いた。
近藤は東雲が戻るのを見てからそう言って立ち上がる。
「お前にしてはまだまだだろう?早くお戻りよ、酒はあるんだから」
「厠くらいゆっくり行かせて欲しいものだがな、東雲、その我が儘息子を頼む」
「あらまあ、はいはい。ごゆっくり、旦那」
近藤と真一郎の息の合った掛け合いに東雲は笑いを堪えながら真一郎の相手に戻る。
部屋を出た近藤が一息吐き、辺りを見回すと、紅葉がひょこっと顔を出して手招きする。
気付かれてはいけないのだろう、慎重な紅葉の様子にそう思った近藤は、何食わぬ顔で紅葉の後を追う。
本当に厠へ立ち寄った後、何回か角を曲がり、階段を一つ降りた先で、近藤はようやく紅葉に遭遇した。
「主様、こちらへ」
紅葉はそう言うが早いか、すぐ側の襖を開いて自分ごと近藤を部屋に押し込んで、また素早く襖を閉じる。
「紅葉、ここは一体」
「そちらの奥へ」
小さく紅葉に促されて近藤は閉じた襖のすぐ奧にある襖を開く。
刹那。
近藤の胸に誰かが飛び込んだ。
一瞬驚いたが、近藤にはそれが誰なのかすぐに分かり、細い体をぎゅうと抱き締めた。
「まさかこんな暗い部屋に呼ばれるとは思わなかったぞ、朧月」
「…ここは私が使っている回し部屋です…ここなら誰も来ません」
朧月越しに布団が敷かれているのを目にした近藤は成る程と納得する。
太夫は逗留する客ばかりではなく一時の客も相手にする。
それを「回し」と言い、それ専用の部屋もあるのだ。
「だが、それなら客が来たら」
ふと気になって近藤が体から朧月を離しながら言う。
朧月は濡れた目で近藤を見ながら囁く。
「今日は回しを取らないと、先に紅葉に伝えて貰っています…だから」
近藤様が、宜しいなら、ここで、私を。
朧月が言葉を終えるのと、近藤が朧月の唇を塞ぐのと、どちらが早いかは分からなかった。
乱雑に着物を脱ぎ捨てて襦袢姿で布団に倒れ込むと、そのまま、朧月は近藤をすんなりと受け入れて、近藤も求められるままに朧月を組み敷いた。