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繚乱〜東雲

桂は椿の所から真っ直ぐ草太の家に向かい、程なく先日と同じ神社の境内に二人でいた。
違うのは桂が草太を引っ張り出した事くらいのものだ。
「この間の、話なんだけど」
桂はゆっくりと話を切り出す。
順序立てて話さなくてはいけない事だと自分が一番良く分かっていた。
「私は、小さい頃から病気がちで…だから父様と母様が女の子の綺麗な着物を着せてくれたの…だから私は、本当は、女の子じゃないの」
「え…?」
草太の表情が少し変わる。
桂はそれに気付きながらも話を続ける。中途半端には出来ない事だ。
「男だけど、私は草太さんが好きなの。夫婦にはなれないけど、私、草太さんとずっとお友達でいたいの」
「本当に男、なのか、お前」
桂の言葉に被せる様に草太が言う。
桂は頷く事しかしなかった。
嘘を吐いていない事は言葉を紡ぐよりも一度頷く方が伝わるに違いないと考えたからだ。
「男なのに…そんな格好して、皆を騙してたのか」
「騙すなんて、そんな」
「男が男に惚れてるなんてそんな訳の分からない事、良く言えたもんだ」
「あたしは」
桂が手を伸ばして草太の着物に触れようとした瞬間。
草太の体が勢い良く後ろに退く。表情が「嫌悪」を露わにしていると桂にもすぐ分かる。
刹那。
「…気持ち悪いんだよ!俺に近付くな!」
草太は捨て台詞の様にそれだけを言い放つと境内から走り去る。
桂の目はその背を見つめる事しか出来ず、体も動かないまま、記憶もぷつりとそこで途切れてしまっていた。
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