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繚乱〜参

夜が更けると自然と外から聞こえていた賑わいが静かになり、程なく「お床入り」の知らせが耳に入る。
紅葉がそれに合わせる様に走り寄り、いつもの様に朧月の手を取ると、朧月もそれが当然と近藤に手を差し伸べる。
近藤も拒まずにその手を取り座を立ち上がる。
す、と朧月と紅葉の歩が進み、近藤はそれに導かれてしばらく進んだ閨へと入る。
良く考えると、沢山の客がいるだろう廓で閨への道筋で誰にも会わないのは不思議な事だ。
そう思った近藤は床に入るべく衝立の向こうで紅葉の手を借りながら着物を脱ぐ朧月に問いかけた。
「それは紅葉達がちゃんと手筈を整えてくれているからです。部屋を出るのも、通る廊下も」
「そうなのか、紅葉」
呼び掛けると、衝立の向こう側で朧月の帯をたたむ紅葉がひょこりと顔を出す。
「はい。逗留のお客様が入った時には、その太夫に付いている禿同士で通る場所決めるんです」
紅葉はそれだけを告げて閨を出る。
後に残るのは朱い襦袢に身を包み、すっかり髪を下ろした朧月と近藤。
「近藤様、こちらへ」
布団に座りながら朧月がそう言うと、近藤は羽織を脱ぎ、素早く畳むと部屋の隅へ置く。
近藤が布団の傍らに膝を付くと、自然に朧月の手が伸び、朧月が近藤を引き寄せると、何の抵抗もなく二人の体が布団に倒れ込む。
朧月の長い髪が白い布団の上に広がり、美しい模様を作る。
「この時を待っていたと言ったら、嫌になるか?」
朧月を押し倒した形で近藤が小さくそう言うと、朧月はくすりと笑いながら近藤の首元に手を回す。
「いいえ。だって私も、近藤様と同じ…今を、待っていたんですから」
近藤はそれを耳にすると、朧月に深い口付けを与え、朧月の体はそんな近藤に応える様に反応し、二人はその次に待つ狂おしくも愛おしい時間に、文字通り身も心も深く溺れて行った。
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