繚乱〜弐
部屋に入ると相変わらず座布団と膳が用意されている。
紅葉の笑顔を肴に酒に手を付けていると、程なく紅葉の声が太夫の到着を告げる。
すいと開く襖。
近藤の視線の先には待ちかねていた姿。
「本日のお上り、誠に」
「朧月」
口上を遮る近藤の声。
朧月の伏せた顔が弾かれる様に近藤に向けられる。
「…っ」
刹那。
朧月の体は自然に動き、畳の上を滑る様に歩くと近藤の腕の中に倒れ込む。
「近藤様…近藤様…っ」
近藤の着物を掴んでそれを繰り返す朧月の、細い体を近藤はゆっくりと抱き締める。
さらさらとした髪を撫でる手が徐々に上に上がり、いつしか、まるで子供をあやす様に朧月の頭を撫でる。
「会いたかった…朧月」
呟いた近藤の声に朧月の顔が上がる。
「会えない間、ずっとお前の顔を思い出していた…さ、笑ってくれ」
「笑えと言われても…そう簡単には」
「それもそうだな」
近藤の顔が緩むのを目にした朧月の顔も同じ様に、優しく緩む。
それはまるで互いに想い合っている様に。
その気持ちが今ようやく結ばれた様に。
「私も、近藤様にお会いしたかった…来て下さって、良かった」
朧月がそう言うと、近藤は朧月の頭を引き寄せて軽く口付け、また抱き締める。
その手はずっと、朧月の頭を優しく撫で続けていた。
繚乱〜弐
終
紅葉の笑顔を肴に酒に手を付けていると、程なく紅葉の声が太夫の到着を告げる。
すいと開く襖。
近藤の視線の先には待ちかねていた姿。
「本日のお上り、誠に」
「朧月」
口上を遮る近藤の声。
朧月の伏せた顔が弾かれる様に近藤に向けられる。
「…っ」
刹那。
朧月の体は自然に動き、畳の上を滑る様に歩くと近藤の腕の中に倒れ込む。
「近藤様…近藤様…っ」
近藤の着物を掴んでそれを繰り返す朧月の、細い体を近藤はゆっくりと抱き締める。
さらさらとした髪を撫でる手が徐々に上に上がり、いつしか、まるで子供をあやす様に朧月の頭を撫でる。
「会いたかった…朧月」
呟いた近藤の声に朧月の顔が上がる。
「会えない間、ずっとお前の顔を思い出していた…さ、笑ってくれ」
「笑えと言われても…そう簡単には」
「それもそうだな」
近藤の顔が緩むのを目にした朧月の顔も同じ様に、優しく緩む。
それはまるで互いに想い合っている様に。
その気持ちが今ようやく結ばれた様に。
「私も、近藤様にお会いしたかった…来て下さって、良かった」
朧月がそう言うと、近藤は朧月の頭を引き寄せて軽く口付け、また抱き締める。
その手はずっと、朧月の頭を優しく撫で続けていた。
繚乱〜弐
終