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繚乱〜東雲

桂の表情が瞬時に変わるのを椿は見逃さない。
「小間物屋で見てすぐ分かったよ…何か理由があって女の格好をしてるんだろう?」
桂は早くなる鼓動となぜ分かったのかとぐるぐる考える頭を何とか落ち着かせ、椿に今までの事を話した。
草太に告白された事も、どうすれば良いのか分からない事も。
「まあ…お前さん程綺麗な子なら、無い話じゃないね」
椿はそう言うと少し考えてから桂に真っ直ぐ向き合う。
「お前さんが、どうしたいか、だよ」
「私が…?」
「ああ。惚れた腫れたなんてものはね、誰が何を言ったって結局本人が決めちまう事なんだよ。お前さんがその坊やに惚れてるなら答えなんて簡単なもんさ」
桂の中に温かい物が生まれる。
それはようやく自分の中で「決める」事が出来た感情と、何よりも椿の気持ちが伝わったが故のものだった。
「あたしも、お前さんと同じだからね。何かあったら…もうしばらくはここにいるから、いつでもおいでな」
「椿さんも…同じ」
椿の手が桂の髪を直す。
どう見ても女にしか見えないこの人も、自分と同じ男。
桂は椿に「私、行ってきます」と笑うと立ち上がり、椿にぽんと背を押されて旅籠を走り出る。
草太に伝えよう。
自分の事を。
自分の気持ちを。
決意した桂の気分はいつになくすっきりしていた。
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