繚乱〜弐
近藤が窓の外にいた時、朧月の部屋を訪れたのは東雲と皐月だった。
朧月が呼んでいたのだが、今回、真一郎が贈った反物は朧月と紅葉二人だけには多かった。
そんな時は「朧月に」と贈られていても、必ず東雲の分がある事を朧月は知っていたのだ。
「姐さん」
「お邪魔するよ、朧月」
四人は反物を囲んで座り込むと、互いにこれが似合うと話し合う。
「…姐さんには、こちらの柳が…ね、皐月」
「はい。東雲姐さんには流れる模様がとても」
「世辞が上手くなったねえ、皐月。じゃあ紅葉も考えておくれ、朧月にはどれが良い?」
「…これ」
問われた禿二人が同時に指さしたのは、薄い桃色の睡蓮が描かれたもの。
「あんた達、良い目をしてるじゃないか」
東雲はそう笑うと朧月の肩に反物を羽織らせる。
「…あんたはこんな優しい色が良く似合う」
「…東雲姐さん」
ふ、と朧月の表情が変わると、東雲は一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑みを浮かべる。
紅葉も、皐月も同様だ。
二人並んで互いの肩に可愛い朝顔の反物を羽織りながら、にこにことしている。
「朧月、あんたの所に最近通い詰めてるお客がいるって聞いたけど…良いお人なのかい?」
「…はい…紅葉にも、とても良くして下さって…紅葉はあのお方がとても好きなんです」
朧月がそう言うと、紅葉は東雲に向いてにっこりと笑う。
「これ、主様に頂きました。私の一番大事なものです」
紅葉が見せたのは、先日来から近藤が紅葉にと贈った小さな櫛と簪だった。
東雲はそんな紅葉の頭を撫で、着物の仕立てを頼む為に反物を纏めると、部屋を出ながら朧月に言う。
「あんたがそんな顔するんだから、余程のお人だ。大事におし」
「そんな顔?」
「やっぱりあんた気が付いてなかったんだね?あんた、さっきから笑ってるんだよ、朧月」
東雲の言葉に驚いたのか、朧月は両手を頬にあてる。
朧月が呼んでいたのだが、今回、真一郎が贈った反物は朧月と紅葉二人だけには多かった。
そんな時は「朧月に」と贈られていても、必ず東雲の分がある事を朧月は知っていたのだ。
「姐さん」
「お邪魔するよ、朧月」
四人は反物を囲んで座り込むと、互いにこれが似合うと話し合う。
「…姐さんには、こちらの柳が…ね、皐月」
「はい。東雲姐さんには流れる模様がとても」
「世辞が上手くなったねえ、皐月。じゃあ紅葉も考えておくれ、朧月にはどれが良い?」
「…これ」
問われた禿二人が同時に指さしたのは、薄い桃色の睡蓮が描かれたもの。
「あんた達、良い目をしてるじゃないか」
東雲はそう笑うと朧月の肩に反物を羽織らせる。
「…あんたはこんな優しい色が良く似合う」
「…東雲姐さん」
ふ、と朧月の表情が変わると、東雲は一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑みを浮かべる。
紅葉も、皐月も同様だ。
二人並んで互いの肩に可愛い朝顔の反物を羽織りながら、にこにことしている。
「朧月、あんたの所に最近通い詰めてるお客がいるって聞いたけど…良いお人なのかい?」
「…はい…紅葉にも、とても良くして下さって…紅葉はあのお方がとても好きなんです」
朧月がそう言うと、紅葉は東雲に向いてにっこりと笑う。
「これ、主様に頂きました。私の一番大事なものです」
紅葉が見せたのは、先日来から近藤が紅葉にと贈った小さな櫛と簪だった。
東雲はそんな紅葉の頭を撫で、着物の仕立てを頼む為に反物を纏めると、部屋を出ながら朧月に言う。
「あんたがそんな顔するんだから、余程のお人だ。大事におし」
「そんな顔?」
「やっぱりあんた気が付いてなかったんだね?あんた、さっきから笑ってるんだよ、朧月」
東雲の言葉に驚いたのか、朧月は両手を頬にあてる。