繚乱〜総次郎
~朧月~
盗人の話、ですか?
私の元旦那で、太一と名乗っておられました。
ええ、私の着物や簪を。
先刻、桜花姐さんから事の次第を聞いたのですけど…いえ、特に何とも思いませんでした。
私はあの人に惚れておりましたが、それも何だか、本当だったのかどうかが分からなくなっているんです。
そういえば、噂ではあの人は人斬りを請け負う人に斬られたと聞きましたが、本当なんでしょうか。
いえ、あの人が生きてはいないだろうとは思っておりました…だって、吉原の、桜花廊のお職から盗みを働いたんですから。
気になるのはその、あの人を斬ったお方です。
いくら仕事とはいえ、人を斬る事でお金を稼ぐなど、とても。
私とて確かに威張って言える仕事ではないのでしょうけど、私は幼い頃からここにおりましたから、この仕事しか知りません。
ここでお職として働く事は、私には当たり前の事なんです。
勿論、もしそのお方がお客で来られたとしたら、私は私の仕事をするだけです。
でも、そんなお方、ここにはきっとお出でになりません。
桜花廊は男宿。
男を相手に床に入る事が出来なければ、花代を払って暖簾をくぐる意味がありませんから。
でも、少し気になるのです、一体どんなお方があの人を…と。
以前は惚れていたのだろうお人、せめて苦しまずにいられたならと、思ってしまうのです。
もし、あの人を斬ったお方がお出でになったなら…。
盗人の話、ですか?
私の元旦那で、太一と名乗っておられました。
ええ、私の着物や簪を。
先刻、桜花姐さんから事の次第を聞いたのですけど…いえ、特に何とも思いませんでした。
私はあの人に惚れておりましたが、それも何だか、本当だったのかどうかが分からなくなっているんです。
そういえば、噂ではあの人は人斬りを請け負う人に斬られたと聞きましたが、本当なんでしょうか。
いえ、あの人が生きてはいないだろうとは思っておりました…だって、吉原の、桜花廊のお職から盗みを働いたんですから。
気になるのはその、あの人を斬ったお方です。
いくら仕事とはいえ、人を斬る事でお金を稼ぐなど、とても。
私とて確かに威張って言える仕事ではないのでしょうけど、私は幼い頃からここにおりましたから、この仕事しか知りません。
ここでお職として働く事は、私には当たり前の事なんです。
勿論、もしそのお方がお客で来られたとしたら、私は私の仕事をするだけです。
でも、そんなお方、ここにはきっとお出でになりません。
桜花廊は男宿。
男を相手に床に入る事が出来なければ、花代を払って暖簾をくぐる意味がありませんから。
でも、少し気になるのです、一体どんなお方があの人を…と。
以前は惚れていたのだろうお人、せめて苦しまずにいられたならと、思ってしまうのです。
もし、あの人を斬ったお方がお出でになったなら…。