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繚乱〜総次郎

~利介~

あれから総次郎の旦那は奴らが持ってくる仕事を淡々とこなしてたんでさ。
あっしは旦那の一言がありましたんで、旦那と奴らの繋ぎになりましてね、旦那に来る仕事は全部知ってまさ。
そういや、先月、旦那に大きな仕事が来てましたぜ。
奴らが言うには「奉行所が手を出せない」様な仕事で、どうやら吉原からの依頼らしいって話でさ。
吉原のいざこざは、奉行所が出る事じゃござんせんが、番屋から知らせが来れば一応形ばかりで請け負うんでさ。
だが本当に奉行所が出る訳じゃござんせん。
奴らはそんな厄介事を奉行所やら番屋から引き受けるのも仕事の内でしてね。
奴らから聞いた話じゃ、お職から金目の物やら金やらを持ち逃げした客がいるらしいんでさ。
廓の主が「盗人の生死を問わないから懲らしめて欲しい」ってんで。ま、こう言われちゃ盗人を生かしておく理由がないんでさ。
元々、吉原の掟を破った奴は五体満足じゃいられねえんですから、自業自得って事でさ。
旦那の仕事っぷりですかい?
えらく怒ってやしたね…人道に反する事は許せねえのが総次郎の旦那の良い所でさ。
で、奴らが調べた盗人の居所に真っ向勝負で乗り込みましてね、そりゃもう見事な太刀捌きでございましたよ…ありゃ、斬られた方もしばらく自分が斬られたって分からねえかも知れねえ。
盗まれた金?
金も品物も見つからなかったって聞きましたがね。
おおかたすっかり使っちまったか、岡場所にでもばらまいたんでやんしょ、そうなりゃ探す方が難しいんでさ。
「せめて何か返してやりたかったな…盗まれて、何も戻らないのは辛かろうに」
総次郎の旦那がそう呟いてたのを、あっしはしっかり覚えてまさ。
旦那は、本当にお優しいお人なんでさ。
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