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繚乱〜朧月

私は裕福ではない農家に三男として生まれた。
上の兄二人は私が物心つく前にどこかへ行ってしまった。
後から分かった事だが、二人は私と、私の次に生まれる予定の子供の為に奉公に出たらしい。
父の稼ぎだけでは沢山の人数を養う事は出来なかったからだ。
二人の兄が奉公へ行った後、私が二歳になろうかという頃、母は双子の弟と妹を出産した。
私はそれまで養われる者だったのだが、弟と妹が生まれてからは彼らの世話に追われた。
辛くはなかった。
金銭的な事は二人の兄の仕送りもあったし、何よりもその年は作物が豊作で、父の実入りも良かったのだ。
私が五歳になり、弟と妹に手がかからなくなった頃。
母はまた子供を身ごもった。

それが私の人生を変える原因である事は、母は勿論、生まれてくる新しい家族すら知らない事だった。
が、世界はそれに気付いていたのだろう。
作物はその年から少しずつ収穫量を減らしていた。
まるで私を追い込む様に。

作物の不作と生まれてくる家族。その頃の私にはその二つの及ぼす事を何一つ、不思議がる事などなかったのだ。
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