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繚乱〜終章

今までと違うのは、新造として客の相手もしなくてはならない事。
勿論、閨までとはいかないが、酒の相手位はこなさなくてはならなくなる。
紅葉も皐月も相応の年になれば客を取る。
不思議とそれが寂しく思うのは朧月だけではなかった。
「あんた達が新造ねぇ…何だか妙な気分だけど」
「東雲姐さんは朧月姐さんの時にもそう思ったんですか?」
にこにこと笑いながら皐月が問うと、東雲は朧月と顔を見合わせながら口を開く。
「この子の時は…思わなかったよ」
新造二人の目が丸くなる。
東雲は朧月の髪に手を触れながら言葉を続けた。
「この子は、こうなる為にここに来た…そう思ってたから、新造になれて当たり前だったんだよ。ようやく追い付いてきた…そんな事を思ってた」
「東雲姐さん」
「朧月には素質があったから、桜花姐さんもすぐ引き取ったんだろうしね」
東雲はそう言って笑顔を作ると、小さな仲間にこれからの心構えなどを説き始めた。
朧月はまるで寺子屋の一角の様な風景を優しい目で眺めながら、ふと、秘めたる人の事を考える。
あの人にも、紅葉が新造に上がる事を報せたい。
紅葉を祝ってやって欲しい。
これから「色子」という名の辛い坂道を、振り返らずにただ登るだけしかない生活を送る、小さな子。
朧月は文机に近寄ると、さらさらと紙に筆を走らせて、それをすぐさま番頭に言付けた。
自分が、紅葉の為に出来るのは、紅葉が会いたい人に来て貰う事。
自分の気持ちは置いても、朧月はただ、紅葉の為に何かしてやりたいと思った。
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