繚乱〜終章
紅葉と皐月。
朧月と東雲を支えてきた禿二人。
そんな禿二人は今、同じ年の禿達数人と共に桜花の前にいる。
禿から新造になる、それを見極める為の目通りだった。
通常の廓ならそんな面倒な事はない。
女郎屋なら、そこにいる禿達は少なからず廓に借財がある。
それ故に新造になり、客を取り、金を稼ぐ。
借財を返済するまで、彼女達に自分の生活はないのだから、自然な成り行きとして自分を売る為に廓に入るのだ。
だが桜花廊は男宿だし、何よりもここにいる禿達に借財はない。
勿論借財のある者も少なからずいるのだが、皆、それでも何かしらの理由を抱えてここにいる。
桜花は「その気も、資質も無い子に色子の仕事は無理ですもの。押し付けるのは簡単だけれど、それで勤まる様な物ではないわ。それならこの廓で、その子に向いた仕事に就いて貰う方が良いでしょう?」と、廓を立ち上げた時から禿を全員色子にはしなかった。
今台所にいる者も、椿や絹の様に諸国から新しい者を連れ帰ったり、諸々の品を仕入れる者も、そうして桜花が振り分けた。
「人間に対する目利き」という技を磨いていなければ出来ない事だが、桜花はそれを難なくやってのけ、廓を育ててきたのだ。
「…皆、お部屋に戻って宜しいわ…後は太夫達に伝えます」
禿達を眺めるだけで桜花はそう口にし、禿達は何も言わず各々の部屋に戻った。
不安がる紅葉と皐月に、朧月と東雲は笑顔のままで言う。
「それが桜花姐さんのやり方なんですよ、大丈夫」
「無駄な事を話すより、その子を良く見た方が良い、ってさ。あんた達なら、きっとお眼鏡に適ってるさ」
数日後、朧月と東雲の側には、髪の結い方も初々しい小さな新造達が、真新しい着物に身を包んで笑っていた。
朧月と東雲を支えてきた禿二人。
そんな禿二人は今、同じ年の禿達数人と共に桜花の前にいる。
禿から新造になる、それを見極める為の目通りだった。
通常の廓ならそんな面倒な事はない。
女郎屋なら、そこにいる禿達は少なからず廓に借財がある。
それ故に新造になり、客を取り、金を稼ぐ。
借財を返済するまで、彼女達に自分の生活はないのだから、自然な成り行きとして自分を売る為に廓に入るのだ。
だが桜花廊は男宿だし、何よりもここにいる禿達に借財はない。
勿論借財のある者も少なからずいるのだが、皆、それでも何かしらの理由を抱えてここにいる。
桜花は「その気も、資質も無い子に色子の仕事は無理ですもの。押し付けるのは簡単だけれど、それで勤まる様な物ではないわ。それならこの廓で、その子に向いた仕事に就いて貰う方が良いでしょう?」と、廓を立ち上げた時から禿を全員色子にはしなかった。
今台所にいる者も、椿や絹の様に諸国から新しい者を連れ帰ったり、諸々の品を仕入れる者も、そうして桜花が振り分けた。
「人間に対する目利き」という技を磨いていなければ出来ない事だが、桜花はそれを難なくやってのけ、廓を育ててきたのだ。
「…皆、お部屋に戻って宜しいわ…後は太夫達に伝えます」
禿達を眺めるだけで桜花はそう口にし、禿達は何も言わず各々の部屋に戻った。
不安がる紅葉と皐月に、朧月と東雲は笑顔のままで言う。
「それが桜花姐さんのやり方なんですよ、大丈夫」
「無駄な事を話すより、その子を良く見た方が良い、ってさ。あんた達なら、きっとお眼鏡に適ってるさ」
数日後、朧月と東雲の側には、髪の結い方も初々しい小さな新造達が、真新しい着物に身を包んで笑っていた。