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繚乱〜終章

「全く、何だってお前がこんな厄介な仕事をしなきゃいけないんだか!」
「まあ落ち着け真一郎。確かに危ない仕事だが、だからと言って俺に何か起こるとは限らんだろう?」
「…そりゃあそうなんだけどね」
近藤と差し向かいで食事を取りながら、真一郎は仕事の話を近藤に告げた。
語を荒げる真一郎に、近藤は酒を注ぎながら言う。
「大丈夫、危ないと思ったら逃げるさ。第一、逃げるなとは書いてないんだからな」
「確かにね、けど」
近藤の言葉に真一郎の表情が緩む。
「私はね、こんな仕事をお前に言いたくないんだ…出来るなら私が握り潰したい位さ」
「お前が元締めになったら、俺達の様な侍崩れな人間は要らなくなるのだろうな」
「悪党は減らないからね…そうなったら、精々二度と悪さをする気にならない位に懲らしめる程度にするさ」
その方が怖いなと近藤が笑う。
真一郎は懐に押し込んだ紙切れを軽く整えてから近藤に手渡す。
「仕事」の詳細は口にしないのが、父親である元締めから嫌になる程言われた事なのだ。
「期日は決まってない…お前にも算段があるだろうしね」
「それは助かるな。期日があると気が急いて良くない」
「酒をゆっくり呑む暇もないってのは勘弁して欲しいもんだね、近藤」
「違いない」
互いの空いた杯を酒で満たし合いながら、その夜、二人は気が付くと布団の上ではなく畳の上で寝ていたと気付くまで飲み明かした。
それは決して珍しい光景ではないらしく、二人が目を覚ました時には体の上にしっかりと布団が乗せられていて、そんな時、自分達が畳で酔いつぶれて寝ていたにも関わらず、二人は声を揃えて言う。
「…どうせ布団を引っ張り出すんだから、それならいっそ布団を敷いた上に引っ張って行ってくれても、罰は当たらないと思わないかい?」
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