繚乱〜終章
「近藤様…」
朧月の声に近藤は腹を決めた様に足と背を正し、朧月を見る。
いつになく真剣な様子に、朧月の背も伸びる。
「朧月。俺はお前さえ受けてくれるならお前を身請けしたいと思っている」
瞬間、朧月の表情が驚きに変わり、次の瞬間。
朧月は近藤に平伏していた。
「朧月…」
「今、それをお答えする事は出来ません…」
嫌なのかと問う近藤に、首を横に振ると、朧月は静かに言う。
「桜花に入って長くおりますが、身請けされたのは新造や格子の色子ばかりで…それに、私は太夫で…ともかく花魁のお許しがないと」
「そうだな…気にする必要はない、ただ伝えたかっただけだ」
近藤はそう言うと足を崩し、表情を曇らせる朧月の頭を撫でて微笑む。
「お前が側にいてくれたらと思ったら、そういう考えになってしまった…性急だったな」
「いえ、そんな…私こそ、きちんとお答え出来ずに申し訳ない限りで」
「だが、良く考えれば…お前はここにいるのだから、俺が通えば問題ない事だ。そうすれば紅葉にも会えるしな」
紅葉はそれを聞いてにっこり笑うと、近藤の羽織の袖を羽のように振りながらちょこんと近藤の傍らに座り込む。
「紅葉が新造になるのが楽しみだ…その時には祝いに何か考えておくからな」
「その時に、主様が来て下されば、それが一番嬉しいです」
紅葉は素直にそう言って近藤の手を握り締める。
いつまでも小さな禿だと思っていても、いつの間にか成長して、色子の仕事をするのだろうとその仕草にふと思う。
そんな近藤に、朧月が続けて言う。
勿論、桜花に認められなければそのまま家に戻されたりするのだが、殆どは色子以外の仕事で桜花に留まる。
椿や絹の様に仕入れや新しい禿を連れ帰ったり、台所や帳場へ入ったりするのだと。
「紅葉なら、お料理の腕がありますから、台所からも呼ばれるでしょうしね」
「そういえばこの前の鍋は美味かったな…また頼めるか?」
そう言って微笑む近藤に、紅葉は精一杯頷いていた。
朧月の声に近藤は腹を決めた様に足と背を正し、朧月を見る。
いつになく真剣な様子に、朧月の背も伸びる。
「朧月。俺はお前さえ受けてくれるならお前を身請けしたいと思っている」
瞬間、朧月の表情が驚きに変わり、次の瞬間。
朧月は近藤に平伏していた。
「朧月…」
「今、それをお答えする事は出来ません…」
嫌なのかと問う近藤に、首を横に振ると、朧月は静かに言う。
「桜花に入って長くおりますが、身請けされたのは新造や格子の色子ばかりで…それに、私は太夫で…ともかく花魁のお許しがないと」
「そうだな…気にする必要はない、ただ伝えたかっただけだ」
近藤はそう言うと足を崩し、表情を曇らせる朧月の頭を撫でて微笑む。
「お前が側にいてくれたらと思ったら、そういう考えになってしまった…性急だったな」
「いえ、そんな…私こそ、きちんとお答え出来ずに申し訳ない限りで」
「だが、良く考えれば…お前はここにいるのだから、俺が通えば問題ない事だ。そうすれば紅葉にも会えるしな」
紅葉はそれを聞いてにっこり笑うと、近藤の羽織の袖を羽のように振りながらちょこんと近藤の傍らに座り込む。
「紅葉が新造になるのが楽しみだ…その時には祝いに何か考えておくからな」
「その時に、主様が来て下されば、それが一番嬉しいです」
紅葉は素直にそう言って近藤の手を握り締める。
いつまでも小さな禿だと思っていても、いつの間にか成長して、色子の仕事をするのだろうとその仕草にふと思う。
そんな近藤に、朧月が続けて言う。
勿論、桜花に認められなければそのまま家に戻されたりするのだが、殆どは色子以外の仕事で桜花に留まる。
椿や絹の様に仕入れや新しい禿を連れ帰ったり、台所や帳場へ入ったりするのだと。
「紅葉なら、お料理の腕がありますから、台所からも呼ばれるでしょうしね」
「そういえばこの前の鍋は美味かったな…また頼めるか?」
そう言って微笑む近藤に、紅葉は精一杯頷いていた。