繚乱〜終章
そんな会話を交わした数日後。
近藤は桜花にいた。
勿論隣には朧月がいる。
火鉢に火を入れていても肌寒い部屋の中、近藤は朧月を胸に抱き締めたままで相変わらず酒に手を伸ばしている。
その先では紅葉が近藤の羽織を引っ掛けて銚子を傾ける。
寒いだろうと近藤が貸したのだが、紅葉はどうやら自分が二人以上入るだろう大きさのそれをいたく気に入った様子で、それでも汚さない様にと気を遣いながら羽織っている。
「近藤様」
胸の中で朧月が呟く。
「その後は、お辛くないのですか?」
「ああ、大丈夫だ。お前にまで気を遣わせてしまうな」
「私は良いんです、この位」
「朧月…つまらない事を聞くが構わないか?」
「…はい」
朧月の返事に近藤は朧月の体を自分から離す。
真っ直ぐに互いを見る。
朧月の美しさを再認識しながら、近藤はぽそりと口を開いた。
「お前は、その…廓に金を借りていたりはするのか?親とか」
「…いいえ」
「ではなぜここに?」
そういえばお話してはいませんでしたか、と朧月は簡単に桜花に入った経緯を話す。
「確かに多少は借金があったと思います…あの時、お絹さんが渡していた包みの中身が金子で、それが私の代金ではなく借りたものだとしたら」
けれど、と朧月は語を続ける。
「だとしても、もう返済しているはずです。私は、自分から望んでここにいるんです」
「そうか…済まない、こんな事を」
「構いません。けれど、どうしてそんな事をお聞きに?」
朧月の問いかけに近藤は頭を掻きながら答える。
「その…どの位の金子が必要かと…思ってな」
ふと気付いた様に紅葉が小さな声で「まるで身請け話みたい」と呟くと、近藤の顔色が変わる。
当たり前だが、朧月がそれを見逃す事も、そこにある意味に気付かない事もない。
近藤は桜花にいた。
勿論隣には朧月がいる。
火鉢に火を入れていても肌寒い部屋の中、近藤は朧月を胸に抱き締めたままで相変わらず酒に手を伸ばしている。
その先では紅葉が近藤の羽織を引っ掛けて銚子を傾ける。
寒いだろうと近藤が貸したのだが、紅葉はどうやら自分が二人以上入るだろう大きさのそれをいたく気に入った様子で、それでも汚さない様にと気を遣いながら羽織っている。
「近藤様」
胸の中で朧月が呟く。
「その後は、お辛くないのですか?」
「ああ、大丈夫だ。お前にまで気を遣わせてしまうな」
「私は良いんです、この位」
「朧月…つまらない事を聞くが構わないか?」
「…はい」
朧月の返事に近藤は朧月の体を自分から離す。
真っ直ぐに互いを見る。
朧月の美しさを再認識しながら、近藤はぽそりと口を開いた。
「お前は、その…廓に金を借りていたりはするのか?親とか」
「…いいえ」
「ではなぜここに?」
そういえばお話してはいませんでしたか、と朧月は簡単に桜花に入った経緯を話す。
「確かに多少は借金があったと思います…あの時、お絹さんが渡していた包みの中身が金子で、それが私の代金ではなく借りたものだとしたら」
けれど、と朧月は語を続ける。
「だとしても、もう返済しているはずです。私は、自分から望んでここにいるんです」
「そうか…済まない、こんな事を」
「構いません。けれど、どうしてそんな事をお聞きに?」
朧月の問いかけに近藤は頭を掻きながら答える。
「その…どの位の金子が必要かと…思ってな」
ふと気付いた様に紅葉が小さな声で「まるで身請け話みたい」と呟くと、近藤の顔色が変わる。
当たり前だが、朧月がそれを見逃す事も、そこにある意味に気付かない事もない。