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繚乱〜東雲

椿は桂を連れて桂の両親の前へ行くと、それが本来の椿なのだと分かる凛とした姿で口火を切る。
「私は江戸吉原にて遊郭に勤めております…この様な折りに申し上げるのも不躾ではございますが、どうぞ、ご子息を私にお預け下さいませ」
「遊郭…?そんな所、桂、お前」
驚きを隠せない両親よりも早く口を開くのはやはり桐哉だった。
そこがどういう場所か、知っているのか。
桐哉が何とか桂を引き留めようとしているのが椿にも両親にも、勿論桂にも伝わる。
が、桂の答えは一つだった。
「兄様、兄様のお気持ちは嬉しいわ。でも私、決めたの」
「桂…」
「私、あの簪が似合う人になりたいの。その為に、椿さんと行きたいの」
しばらくの間。
それは仕方ない事だった。
桐哉は一度二度と両親を見やり、意を決した様に言う。
「桂が決めたなら…止めても無駄なのだろうな」
「兄様」
「約束してくれ、桂。決して無理はしないと」
桂は桐哉の手を取ると「大丈夫よ、椿さんがいるもの」と微笑む。
椿は両親に細かい事を話し、その日の夕方、桂の店で購入した櫛や簪と一緒に桂を連れて江戸へ戻り、その足で桂を花魁の待つ遊郭「桜花廊」へと連れて行った。
華やかな紅と、艶めく黒、廓の名「桜花」の薄桃色が見事に調和した見世。
椿の後ろに付いて廊下を歩く桂に、見世に出ている色子達の目が集中し、次第にざわつく色子達の声を椿が一喝する。
「お前達ちゃんと仕事おし!桜花の名に傷を付ける気かい!」
その声に色子達は一斉に返事を返し、皆各々の場所へ走る。
全ての光景に桂が呆気に取られていると、椿は廓の一番奥、立派な襖の部屋の前で立ち止まった。
「桂。お前さんが会いたい人は、ここにいるよ」
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