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繚乱〜肆

朧月が目を赤くして茶屋に戻ると、絹は既にそこにいて、朧月に何を言う事なくまた手を引いて桜花へと戻る。
道すがら、絹はぽつりと口を開く。
「花魁がね、戻ったら顔を出すようにって」
「私に、ですか」
絹は頷くと、朧月の手を強く握る。
それはまるで幼い日の様に。
「さ、帰ろう。あたしたちの家に」
微笑む絹に朧月は「はい」と答えると、目の前に見え始めた大門と、その奧へ視線を投げる。
桜花へ帰り、花魁に会う。
そうしてまた仕事が始まる。
朧月は前だけを向いていた。


ほんの少しの、心に開いた隙間には気付かないふりをして。




繚乱〜肆


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