繚乱〜東雲
江戸よりも少し北にある小さな町。
それなりに賑やかな街並みと並ぶ田畑が和やかな雰囲気を醸し出す。
その街並みの中にある小間物屋に、その日、新しい家族が増えていた。
予定よりも早く生まれたからか、その男の子は上の兄の時よりも小さく、体も弱かった。
男の子の身を案じた両親は神主に相談、神主は「女児として育てなさい」と進言した。
古来、武家の子や体の弱い子は「強く育つ様に」と願いを込めて女の着物を着せ、女として育てる習慣がある。
この神主が提案したのもそれに依るものだ。
両親は早速男の子を「女の子」として育てる事にした。
店子には口止めをして決して生まれた子が「男の子」と知られない様に、家族の中でさえ「男の子」と扱う事をしなかった。
その甲斐あってか「桂」と名付けられた子は元気に育ち、早くも五つを数えた。
「おけいちゃーん」
「はあい」
外からの声に小間物屋の暖簾を跳ね上げて来たのは、長い髪を綺麗に結い上げた少女。
きゃあきゃあとはしゃぎながら走る「娘」は正しくあの時の「男の子」だった。
それなりに賑やかな街並みと並ぶ田畑が和やかな雰囲気を醸し出す。
その街並みの中にある小間物屋に、その日、新しい家族が増えていた。
予定よりも早く生まれたからか、その男の子は上の兄の時よりも小さく、体も弱かった。
男の子の身を案じた両親は神主に相談、神主は「女児として育てなさい」と進言した。
古来、武家の子や体の弱い子は「強く育つ様に」と願いを込めて女の着物を着せ、女として育てる習慣がある。
この神主が提案したのもそれに依るものだ。
両親は早速男の子を「女の子」として育てる事にした。
店子には口止めをして決して生まれた子が「男の子」と知られない様に、家族の中でさえ「男の子」と扱う事をしなかった。
その甲斐あってか「桂」と名付けられた子は元気に育ち、早くも五つを数えた。
「おけいちゃーん」
「はあい」
外からの声に小間物屋の暖簾を跳ね上げて来たのは、長い髪を綺麗に結い上げた少女。
きゃあきゃあとはしゃぎながら走る「娘」は正しくあの時の「男の子」だった。
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