片思い*緑谷(爆豪)
「何か使うもの…それって、文房具とかでも嬉しいのかな?」
「うん、嬉しいと思うよ…なんでも」
デクくんから貰ったものは、なんでも嬉しいに決まっている。それはきっとお茶子ちゃんだってそうだ。
「そっか…なるほど。じゃあ…」
ブツブツと何かを考えているデクくん。
…分かっている。デクくんには悪気なんて全くないし、私が彼に対して好意を寄せているなんて微塵も考えていないのだろう。
もし私が好きだと知っていたら、こんな酷な事はしない。デクくんは優しいから。
「…デクくん、私予習しなきゃ」
「あっ…ご、ごめんね!教えてくれてありがとう…!」
「…うん」
デクくんが慌てたように立ち上がり、お礼を言って部屋を出ていく。
バタン
静かに閉まったドアの音に、安心して深く息を吸う。
「……ふぅ、」
大丈夫、気づかれてない。私はちゃんと普通に振る舞えていた。
こんな風に友達に相談してまで想って貰えているお茶子ちゃんが羨ましい。
私も、デクくんに…あんな表情、されてみたかった。
「…きっつ」
言わなくても、振られたようなものだ…こんなの。
片思いの時が1番楽しいなんてよく聞くけど、こんなに辛いことは他にない。
私はその後誰にも会いたくなくて、食事の時間もロビーには行かなかった。