片思い*緑谷(爆豪)
「デクくーん!一緒に帰ろ!」
「あ、うん!」
お茶子ちゃんと飯田くんがデクくんに声をかけて3人で教室を出ていく。
その光景を、いつも羨ましいと思いながら輪に入れずに見つめる。
「楓ちゃん、帰りましょ」
「あ、うん」
梅雨ちゃんに声をかけられて自分の荷物を持つ。
少し前を歩いていたデクくん達を見て小さくため息を着くと、梅雨ちゃんが静かに口を開いた。
「…楓ちゃん、思ってるだけじゃ伝わらないのよ」
「え…?」
「私はお茶子ちゃんも楓ちゃんも大好きよ。だからどっちを、とかはないけれど楓ちゃんのそんな顔を見るのは悲しいわ」
…梅雨ちゃんは、分かっているのだろうか。
私が、デクくんを好きなこと。
「…ありがとう、梅雨ちゃん」
「ケロケロ」
梅雨ちゃんが優しく笑い、私もつられて口元を上げる。
そうだ、思ってるだけじゃ伝わらない。
デクくんに抱くこの気持ちが恋なんだと気づいてから、何となく距離をとっていた。
誰よりも努力家で優しくて、困っている人を絶対に見捨てないデクくん。そんな彼を好きになるのに時間はかからなかった。
自分の中で気づいたこの気持ちに蓋をしてしまえば楽に過ごせるのに、日に日に大きくなる想いを無視しながら生活するのは想像以上にしんどい。
…それに、多分。お茶子ちゃんも、デクくんのこと…