ヒーローの性*轟焦凍
「話は聞かせて貰ったぞ。楓さん、と言ったな」
「は、はい……」
「君にはうちの事務所で働いてもらう」
エンデヴァーのメラメラした炎が瞳で揺れる。
「へ…?」
「うちには多くのサイドキックが働き宿泊施設もある。トレーニングルームもある、働くにあたり不備はないだろう」
「え…で、でもエンデヴァーの事務所に私は必要ないんじゃ…」
「そんな事は無いぞ。治癒系の個性持ちは少ない。君がヴィラン側の人間じゃなくて俺は有難いと思っている」
「エンデヴァー…」
表情を崩す事はないが、エンデヴァーの優しさが伝わってくる。
「…親父、いいのか?」
「ただし身内だからと言って特別扱いはしない。いいな」
み、身内…?エンデヴァー、私の事身内だと思ってくれてるの…?
思いもよらない言葉に赤面する。
「お前が一緒の場所で働いてくれるなら…俺も安心出来る」
「焦凍くん…」
「…フン。では君の事務所には俺から説明しておこう。退院の目処が立ったらショート、俺に連絡をしてこい」
「分かった」
「絶対だぞ。絶対連絡してこい」
エンデヴァーはそう念を押して病室を出て行った。
私が、これからエンデヴァーの事務所で…?
「い、いいのかな…?」
エンデヴァーの所で働きたいヒーローなんてごまんといるのに、私が正式な経由も踏まずに働くなんて…
「アイツが許可したんだから気にすんな」
何か問題あるのか?と焦凍くんは真っ直ぐに私を見つめる。
「う、ううん…そっか。有難いね」
エンデヴァーなりの、焦凍くんへの気遣いもきっとある。
優しいお父さんだと、改めて思う。