ヒーローの性*轟焦凍
「え…?」
焦凍くんは辛そうな顔で私の腕をなぞる。
「この傷は消えねぇ。これから先、お前にどんな事が起きても…俺は助けてやれないかもしれない」
今回の件で負った傷。
こんなの、ヒーローをしていれば何ともない。
それでも私が怪我をすると、焦凍くんは辛そうな顔をする。
それは…私だって、そうだ。焦凍くんが怪我をすれば心配するし、いつか大きな怪我をしてしまうのではないかと日々思う。
「…焦凍くん」
「同じヒーロー志望として雄英で頑張ってきたのは知ってる。けど、心配なんだ」
私が無茶をしたせいで、焦凍くんにこんな思いをさせてしまっている。
それが申し訳なくて口を紡ぐ。先に口を開いたのは焦凍くんだ。
「…わりぃ。俺の我儘だ」
「ううん、そんな事ないよ。私…ヒーロー向いてないのかも」
「そんな事を言わせたいんじゃねぇ…」
焦凍くんが優しく抱き締めてくれる。
久しぶりの焦凍くんの体温に、思わず泣きそうになった。
焦凍くんにこんなに心配かけて、何をしているんだろう。
「取り込み中失礼するぞ」
何時までそうしていたか分からないけど、ヌッと大きな影が上から重なり驚いて視線を向ける。
そこには私達を見下ろすエンデヴァーがいた。
「え、エンデヴァー…!」