ヒーローの性*轟焦凍
見たこともない、怪しい笑みを浮かべながら近づいてくる人物に思わず男の子を隠す。
「お前、ヒーローか?」
低くドスの効いた声に震える足が止まらなくなる。
「そうだけど…何よ」
「俺はヒーローが嫌いなんだよ…分かるだろ?」
ヤバい状況だ、この子は瓦礫に挟まれて動けないし私も戦闘は出来ない。
この子を置いて逃げるなんてもっと無理…!
「おねえちゃ…」
「大丈夫だよ。大丈夫」
「何だ、そこにガキがいんのか」
ヴィランに見つかってしまい、立ち上がって瓦礫の前に立つ。
私だって、これでも雄英を卒業している。
役立たずで戦闘向きじゃないけど、私だってヒーローになった以上人を守る責任がある。
私だって、焦凍くんみたいに…人を守れるヒーローに。
「覚悟はあるみたいだな。じゃあなお嬢ちゃん」
最後に思い浮かぶのは焦凍くんだった。
ごめんなさい、焦凍くん…あぁ、今日記念日だったのになぁ。ケーキでも買って帰ろうとしてたのに。
激しい音と痛み、自分の口から出た血を見たのを最後に意識を失った。