ヒーローの性*轟焦凍
家に近づくにつれ、なんだか人が多くなってきた気がする。
なに…?こんな夜に、何でこんなに…
「おいっ!そっちは危ねぇぞ!」
「えっ?」
「ヴィランが出たんだ!逃げろ!」
私とは反対の方へ逃げていく人達。
「えっ…ヴィラン…!?」
こんな場所に、ヴィランが出るなんて…
どうしよう、一旦事務所に戻って指示を…
「うぁあ〜ん、ママァ〜!」
事務所へ戻ろうとした瞬間、小さい男の子の泣き声が聞こえて足を止める。
泣いてる…男の子、どこ…!?
「ママァ〜ぁ、!」
「見つけたっ…!」
男の子は瓦礫の下に埋もれていて、頭から血を流している。
大変だ…すぐに治してあげなきゃ。
事務所の先輩に要件だけをメールしてすぐに駆け寄る。
「僕、大丈夫?もう心配ないからね」
「…っおねえちゃん、だれ…?」
「私はヒーローなの。今すぐ助けてあげるからね」
精一杯の笑顔を作って震える足を隠す。
ダメだ、落ち着け私…私がパニクってしまうとこの子に移ってしまう。
怪我は治せるけど、この瓦礫は1人ではとても持ち上げられない。
早く退かさないとこの子の小さい体では耐えられないだろう。
ここに、お茶子ちゃんがいれば…
ていうか、ヴィランは何人なの…?プロヒーローは来てるの…?
時間が無いのに…!
「お?こんな所にも人がいたか」
最悪のタイミングで、ヴィランに見つかってしまった。