お見舞い*千歳
「よーしきったね。俺はそろそろ帰るばい」
スっと腰をあげる千ちゃんに、慌てて制服の袖を掴む。
「え、もう帰っちゃうの?」
「楓は病人やけん、寝ときなすって」
「でも、目覚めちゃったよ…!お願い、話し相手になって?」
お母さんも今日は遅くなるって言ってたし、体調が悪いと何故か1人だと心細い。
千ちゃんは小さくため息をつき、再び座る。
「仕方なかね」
「っありがとう、千ちゃん!」
携帯で時間を確認しようとしたら、数件メッセージが届いていることに気づく。
ゆっ子からと、千ちゃんから。
後、謙也と白石くん、金ちゃんからも来ていた。
「どげんしたと?」
画面を見て笑っていたのか、千ちゃんが不思議そうに私を見上げる。
「ふふ、金ちゃんからメッセージ来てたんだけどね。内容が"たこ焼き食べて元気出せ"だって」
「金ちゃんらしかね。ばってん、病人にたこ焼きはきつかね」
謙也と白石くんからも、体調を心配するようなメッセージが来ていた。
申し訳ないな…明日までには治して学校行かなきゃ。
「千ちゃんも、送ってくれたんだね。携帯苦手なのに」
ありがとう、と少し茶化すように言う。
「せからしか」
「ごめんごめん。嬉しいよ、千ちゃん」