お見舞い*千歳
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「…ん」
「お、起きたとね」
薄らと目を開くと、そこにいた人物が私のおでこのタオルを変えた。
段々と視点が合い、耳についていたピアスが光る。
「千ちゃん…なんでここに…?」
「お見舞いに来たとよ。みよりさんから頼まれたと」
みよりとは私の母のことである。
千ちゃんは私の母と仲良しで、よくメールのやり取りをしている事は知っていた。
そっか、お母さん…千ちゃんにお願いして…
「具合はどうね」
「…んー、大分マシにはなったかな。まだ少しダルい感じ」
「果物なら食べれるとね?」
千ちゃんは色々買ってきてくれたみたいで、袋からカットりんごを出す。
「あ、ごめんね…千ちゃん、ありがとう」
「謝ることはなか。口開けんね」
「え…」
所謂アーン、というやつ…ですか。
千ちゃんは早く、と言わんばかりに私の口元にリンゴを近づける。
「あ…」
薄く口を開いてリンゴを食べると、千ちゃんは目を細めて笑う。
風邪の時はやっぱり果物が美味しく感じる…お腹
すいてなくても、これなら食べられる。
「薬飲みなっせ」
「うん…」
千ちゃんから薬を貰い、棚にあるコップを手に取り口に含む。
私が薬を飲んだことを確認した千ちゃんはニコリと笑った。