ペテン師の技*仁王
「私、は…」
ドクンドクンと胸の鼓動がうるさい。
仁王先輩の手が私の手のひらに触れ、ビクッと反応してしまう。
周りから見たら私たちは今、どういう風に見えているのだろうか。
そんな事を考えしまうくらい思考がグルグルと回る。
「私ー」
「あれ!かえでー!」
「ひゃっ…!」
突如後ろから声をかけられ、ビクッと体が震え振り向く。
「し、慎也…!?」
慎也はゆっ子の弟で、慎也の後ろの方ではゆっ子がワタワタと手を振り頭を下げていた。
「楓も来てたのかよ!ってうわぁ、イケメン!」
慎也は仁王先輩を見ると飛び跳ねたように大袈裟に驚く。
「ちょ、ちょっと慎也…」
「あ、あははー!あれ!楓と仁王先輩!偶然ですね!ではこれで!」
ババっとゆっ子が後ろから割り込み、台風のように慎也を連れて行ってしまった。
「楓ー!今度また家に遊びに来いよー!」
慎也は遠くから大声で叫びながらひらひらと手を振っていた。
「あ…い、行っちゃった」
「…今のは知り合いか?」
これまでずっと黙っていた仁王先輩が口を開く。