ペテン師の技*仁王
「…は?」
仁王先輩、今なんて…?
ドンドンと聞こえる太鼓の音が遠くに感じる。
目の前にいる先輩の瞳は熱っぽくて色っぽい。
「…冗談、ですか…?」
口に出して、自分の声が少し震えていることに気づく。
先輩は少し眉を下げて困ったように笑った。
「冗談で、こんな事言わん」
「な、なんで…」
「俺がこんな事言うとる理由、分からんか?」
「っ分かりません…!先輩は、いつも…何考えてるか、わかりません」
至近距離で見つめられ、恥ずかしくて目を逸らす。
「よく言われる。慣れとるが、お前さんには言われたくないの」
「え…」
「俺からしたら、お前さんの考えとる事が分からん。ペテン師の名が聞いて呆れるの」
私の考えてること…?
私はいつも…
「…先輩は、私のことが好きなんですか?」
その言葉に、仁王先輩が目を見開く。
しばらく見つめ合うと、先輩は目を細めた。
「どうかの。好きと言ったらどうなる?」
予想外の答えについ口ごもってしまう。
「ど、どうって…その」
「お前さんは、俺の事…どう思っとる?」