ペテン師の技*仁王
「先輩…私の名前」
「名前がどうした」
今、楓って…呼んだよね?
先輩に名前を呼ばれるのは初めてだ…いつも、お前とかお前さんなのに。
「いえ、私の名前知ってたんだなって」
「名前も知らんような奴と、こんな場所には来んよ」
「確かにそうですね…これ、ありがとうございました」
先輩に取ってもらったキーホルダーは、提灯の光に合わせてキラキラと光る。
「構わんよ。それ、貸してみ」
先輩はトランプを指さし、言われた通りに先輩の手のひらに乗せる。
先輩は隅の方に移動して、トランプをケースから出してシャッフルする。
「…?」
その光景をジッと見ていると、先輩はカードの中から1枚を私に選べと差し出した。
「…選べばいいんですか?」
適当にその中からカードを抜き取る。
「賭けをせんか?」
「え?」