ペテン師の技*仁王
「仁王先輩、射的やりましょ!」
ガヤガヤと周りが騒がしく、あちこちからいい匂いがする。
私はこの雰囲気、嫌いじゃない。
「得意なんか?」
「いえ、特に…でも、祭りと言ったら射的です!」
おじさんにお金を渡して、並んでる中で欲しいものに狙いを定め撃つ。
弾は3発ある。集中して目を細めた。
パンッ、
弾はパチンっとトランプに当たった。
トランプの箱が少し傾き、それを見ていた仁王先輩が背後から私の顔を覗く。
「何じゃ、トランプが欲しいのか?」
「…隣のキーホルダーを狙ったんです」
不貞腐れる私を横目に、仁王先輩は目を細めてクク、と笑う。
「貸してみんしゃい」
私から射的銃を受け取り、仁王先輩が構える。
少し真剣なその横顔にドキリと心臓が鳴った。
パンッ
「っ!当たっ…!」
先輩の撃った弾は私が欲しがったキーホルダーに当たり、クルクルと回転して床に落ちた。
「す、凄いです先輩!」
「まだ1発残っとる」
先輩はまた狙いを定め、私が1回当てたトランプの角に当ててそれも落としてしまった。
「おめでとさん。お嬢ちゃん、彼氏上手いねぇ」
射的のおじさんが、ニコニコと笑いながらキーホルダーとトランプを私に手渡す。
「え!?か、彼氏じゃー」
「行くぞ、楓」
「っえー」
仁王先輩が私の名前を呼び、手を引く。