ペテン師の技*仁王
「に、仁王先輩…良かったんですか?」
「ずっと前からお前さん見えとったよ。ああいう時は出てこい」
「え!見えてましたか?」
「あぁ。バレバレじゃ」
仁王先輩は屋台でラムネを2つ買うと、1つ私に持たせて勝手に乾杯をする。
「しつこいのは嫌いじゃからな。それに、俺は今日お前さんと約束しとる」
仁王先輩は近くにある長椅子に座り、私もつられて横に座る。
「…ラムネ、ありがとうございます」
キンキンに冷えているラムネを少し首元に当てると、一気に体温が下がって気持ちいい。
「浴衣、似合っとるな」
不意に浴衣を褒められ、飲んでいたラムネを吹きそうになる。
「えっ…そ、そうですか?」
「お前さんの浴衣姿を見れたなら、来た甲斐があったの」
隣で優しく微笑む仁王先輩にカァッと顔が熱くなる。
…なんか、今日の仁王先輩…変なの。
「仁王先輩も、似合ってますよ…浴衣」
「はは、ありがとさん」
私も、今日は変な気分だ。