ペテン師の技*仁王
「意外か?」
「意外だよー!雅治、暑いの苦手じゃん」
「まぁな」
仁王先輩と、お似合いだな…あの人。
傍から見たら美男美女カップルだ。
「雅治が来るなら誘えば良かった。今日は誰と来たの?柳生くんとか?」
「…いや」
「もしかして1人?なら私と…」
女の人が、仁王先輩の腕に手をかける。
…仁王先輩も、もしかしたらあの人と回った方が楽しいかもしれない。
そもそも私と本当に約束してくれたのか…
もうこれ以上あの人と仁王先輩を見たくなくて、静かに階段を降りる。
「すまんが、今日はデートじゃ」
その声が私まで届いて、後ろから引かれた手に驚いて振り返る。
「に、仁王先輩…!」
「5分遅刻じゃ」
仁王先輩は目の前でニヤリと笑うと、私の手を引いたまま横道から屋台のところまで歩く。