ペテン師の技*仁王
「祭り?」
「…今日学校へ来る途中、神社に提灯がぶら下がっているのを見かけたんです」
「あー、もうそんな時期か」
毎年、街で行われる小さいお祭り。
それでも花火は上がるし、屋台も結構出る。
「何じゃお前さん、それを話に来たのか?」
「……はい」
ただでさえ暑いのに、思ったより大胆な事をしてしまったと恥ずかしくなってくる。
「…暑いのは苦手なんじゃがの」
そりゃ、そうだよね。
元々断られる前提で話題に出したのだ、それにわざわざ私となんか行かないよね。
「そ、うですよね。きっと人も凄いし」
「人混みも苦手やの」
「分かってますよ。言ってみただけです」
仕方ない。
お祭りは、誰か他の友達を誘って行こうか…
仁王先輩はゆっくりと体を起こし、欠伸をしながら立ち上がる。
「もう行くんですか?」
立ち上がった仁王先輩を見上げると、口元を上げて目を細めた先輩はポン、と私の頭を撫でた。
「ほいじゃ、今日7時に神社前な」
「え……え!?」
ニヤリと笑う先輩は、そのまま手をヒラヒラと振って階段を降りていってしまう。
い、今の…一緒に行ってくれる、ってこと…?