お化け屋敷*立海(前編)
「なんでって…ブンちゃんが良かったからだよ」
「なんで俺なんだよぃ?」
「ブンちゃん、選ばれてトーゼンって言ってなかった?さっき」
気を使わなくていいし、赤也みたいにうるさくないし他のメンバーより喋りやすい。
「自分では思ってたけどな。あの中では俺が一番ってことだろ?」
「ん?うん、そうだね」
たまにからかってくるけど、ブンちゃん相手なら言いたいことも言える。二人組になるなら一択でブンちゃんを選ぶ。
「そーか。そんならいい」
手を繋いだまま、ブンちゃんは上機嫌に声のトーンをあげた。
「それがどうかしたの?」
「いいや。お前に近いのが俺ってことが分かったから」
「?」
私なにか変なこと言ったかな…
たまにでてくる仕掛けに怯えながら、なんとか最終の手前までたどり着いた。
「やっとここまで来た…あとは、このぬいぐるみをー」
棚の上に置いてあるぬいぐるみに手を伸ばした瞬間、そのすぐ後ろから勢いよくお化けが出てきた。
バーーーンッ!
「ぎゃー!!」
「っおい、楓!」
「いやー!!助けて!!」
目の前にいるブンちゃんの後ろに力いっぱいしがみつき目を瞑る。
「おい、落ち着けって…」
「もうやだぁ…ブンちゃん、ぬいぐるみとって」
「はいはい。そのままでいいから少し力抜けよ」
背中にしがみついた私を抱えるようにして、そのままおんぶする形で支えてくれる。
『アリガトウ…』
ぬいぐるみを指定された場所に返すと、上の方から女の子の声が聞こえてきて少しずつ明るくなってきた。
「これで終わりっぽいな」
「はー…よかった…」
ようやく一息つけると思いブンちゃんの背中から降りようとすると、地面に足がついてクルッと体を反転させられる。