お化け屋敷*立海(前編)
「え?なんか言った?」
「いや。何でも」
しら〜と私を見下ろして、ブンちゃんが浅いため息をつく。
涼しい風が前髪を揺らし、あっという間に隣にいるブンちゃんの顔が見えづらくなる。
「ねぇ…急に脅かしたりしないでね」
「どんだけビビってんだよ。こんなん全部作り物だぜ」
「理解はできても怖いんだよ…ブンちゃん怖くないの?」
「全然」
「えー…」
確かに、ブンちゃんは怖がりそうにないけど…それにしても飄々とし過ぎだ。
でも、あのメンバーで怖がりそうな人っていないかも…皆面白がりそうというか、寧ろお化けの方が去っていきそう。
「楓」
「っひゃあ!!何!?」
「うるせぇな。大声出すなよ」
私の奇声に驚いたブンちゃんがしかめっ面をして耳を塞ぐ。
「ご、ごめん。何?」
「そこ、段差」
「え?あ…うん。ありがとう」
目の前の段差を教えてくれただけか…ビックリした。
確かに今教えてもらわなかったら、つまづいていたかも。
「なぁ、なんで一緒に行くやつ、俺にしたんだよ」
「え?」
「一緒に行きたいって、他の奴らも言ってただろ。なんで俺なんだよ」