お化け屋敷*立海(前編)
丸井ブン太の場合
「じゃあ…ブンちゃんかな」
ブンちゃんは一番話しやすいし、心許した親友のような存在。
「ま、トーゼンだな」
腕を組んでいたブンちゃんが嬉しそうに笑い、私の少し前を歩く。
「行くぞ、楓」
「う、うん」
なんか、今更心配になってきた…ブンちゃんって人をおちょくるの好きだし、私を脅かしてきそうだな。
ビビってる私を見て楽しんで、置いていく…なんてことも有り得そう。
どうしよう、今からでも他の誰かにー
「何してんだよ。行くぞ」
「あ……はい」
入口方面でウロウロとしていると、ブンちゃんに肩を掴まれて何も言えなくなってしまう。
「ねーブンちゃん確認だけど…置いてったりしないでね?」
「はぁ?そんなことしねーよ」
「ほんとに?絶対?脅かしたりもしないでね?」
「分かったって。どんだけ信用ねぇんだよ」
呆れた様子で私の頭をクシャッと撫でたブンちゃんに少し安心する。
よし、これでよっぽどのことがない限り1人になる事はなさそう…
ブンちゃんは身軽だから、いざという時私を見捨てて逃げそうだからな…ちゃんと言い聞かせておかないと。
「なぁ、歩きずれぇんだけど」
中に入ってブンちゃんの服の裾を掴んだままの私。
「だって掴んどかないとブンちゃん逃げそうだし」
「逃げねぇって。掴むなら服じゃなくてこっちにしろよ」
ブンちゃんが自ら左手を差し出してくれて、それに安心して右手で握る。
「お前手ぇつめてーな」
「そう?」
「ちぃせーし」
「私からしたら、ブンちゃんが大きいんだよ」
小柄にみえても、私よりは全然背も高いし手も大きいんだな。
「ブンちゃんがちゃんと男の子で安心したよ」
「はぁ?何だそりゃ」
「いざと言う時は守ってね、ブンちゃん」
「守ってやるよ。報酬は貰うけどな」
「報酬?あぁ、はいはい」
ブンちゃんにはお菓子をあげれば大体交渉は成功する。
いつも二言目には甘いものや食べれるものを要求してくるし、頼み事はそれ系が多い。
「…お前何か勘違いしてんな」