お化け屋敷*立海(前編)
ー赤也を選んだ場合ー
「えー…と…じゃあ、赤也…かな」
「やりー!!やっぱ俺っすよね!」
一番気が楽だし…赤也相手なら、殴っても許されそうだし。
「そんじゃ行きましょ先輩!」
「ちょっ、あんま押さないで!」
グイグイと背中を押されて、お化け屋敷の入口に足を踏み入れる。
辺りは真っ暗で異様に涼しくて、明かりなんてまるでない。
こういう雰囲気が苦手なんだよな…お化け役が人間だとしても、怖いものは怖い。
ここのお化け屋敷は、最初に短いビデオを見せられて人形が無くしたぬいぐるみを見つけるというミッションがあるらしい。
『お願い…見つけて…私の、…』
テレビに映し出される血まみれの女の子に、赤也の腕をギリギリと掴む。
「先輩、ちょ、力強いっす」
「赤也…ホントに入るの?中…」
「当たり前じゃないっすか。ここまで来て」
「怖くないの?こういう系」
「所詮作り物っすよ。怖いというより楽しみっすよ」
微塵も怖くなさそうな赤也に少しだけホッとする。
『見つけテ…テ…』
ザーッ、とテレビが消えて、目の前の扉が重々しく開く。
「さ、行きますか先輩」
「……うん…」
赤也のシャツを掴んだまま、私は少し後ろから足をゆっくりと進めた。