俺様*跡部
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「おい。着いたぞ」
良い匂いが鼻を掠め、低く通りの良い声に薄目を開く。
…あれ、私また寝てた…
窓側に寄りかかって寝ていたつもりが、いつの間にか跡部の肩に身を任せていた。
目線を上に上げると、跡部が車を止めて至近距離で私を見下ろしている。
「っご、ごめん…」
急いで跡部から離れてシートベルトを外す。
お礼を言って外に出ようと前を向くと、自分の家じゃない場所に戸惑う。
「あ…あれ…ここは?」
「お前の家を聞く前に寝てしまったんだな。俺の家に連れてきた」
「え…っ」
そうだ、確かに私…跡部に家を教えていない。
私の馬鹿、なんで寝たのよ…せめて伝えてから寝れば……って、そうじゃない。
「え、えっと…ここからタクシーは出てる?」
外に出て敷地内に出ようとする私。
「アン?ここまで来て帰すかよ」
「えっ…ちょっと!」
ガシ、と手首を掴まれて跡部に引っ張られながら逃げ道をなくした。