俺様*跡部
「跡部が運転してる」
隣で騒ぐ私を、呆れた顔で眉を顰める跡部。
「当たり前だ。運転くらいするだろ」
「なんか、イメージなくてさ」
跡部の運転姿が見れるなんて、何だかとても贅沢をしている気分だ。
天下の跡部様も、ここに女の子を乗せたりしてるのかな。
「何だ、何か言いたそうだな」
視線に気づいたのか、信号待ちで横目で私を見てくる。
「今まで、ここにどんな美女を乗せたの?」
単なる興味本位だ。
跡部ともなると、相当な美女を侍らせているに違いない。
「アン?何でそんな事聞く」
「いや…少し、気になって」
「…横に乗せた女はお前が初めてだ」
予想もしていなかった跡部の回答に驚いて彼を見る。
「え…!?嘘」
「こんな事で嘘つくかよ」
…私が最初?それこそ、何故だ。
跡部はこんな性格だけど、困っている人を無視するような非情な人ではない。今まで機会なんて沢山あっただろうに。
「跡部って普段車乗るの?」
「いや。普段は飛行機か新幹線が多いな」
「あぁ、だから…」
そっか、運転すること自体跡部にとっては珍しいんだ。
普段テニスプレーヤーとして移動が多いのは理解できるし確かに自分で運転することなんてないよね。
「…何か勘違いしているようだが、俺様は誰でも乗せる訳じゃないぞ」
「え?」
「何でもねぇよ」
跡部の車で流れているクラシックに耳を傾けていると再び眠気に襲われる。
ウトウトしている私に、横にいる跡部がフッと目を細めた。