俺様*跡部
「何それ。跡部、かっこいい〜」
「当然の事を棒読みで言うな」
これがカリスマというやつか…いやはや、恐れ入った。
卒業してから跡部のお世話になるなんて考えもしなかった。
「これで今日は帰れるだろ」
「うん…ありがとう、跡部」
私が家に帰ってないことを察知してか、跡部が掛けていたジャケットを羽織る。
「送ってやる。行くぞ」
「え…いいの?」
「あぁ。早くしろ」
ここ最近いつ家に帰れるか分からないので、車通勤はしていなかった。
今からタクシーでも拾うか、と考えていた私にとって救世主のお言葉。素直に甘えることにした。
帰り支度をして、既に誰もいなくなったオフィスの電気を消す。
「跡部、私が起きるまで待っててくれたの?」
エレベーターに乗り、地下へのボタンを押す。
「今日はオフだからな」
「ありがとう、爆睡してたね私」
「あぁ、よく寝てたな。お前寝言言ってたぞ」
「嘘!?なんて!?」
跡部の前で寝言…!?
勢いよく顔を向けた私を、跡部は可笑しそうに見下ろす。
「さぁな。覚えてねぇ」
「……なら、いいけど」
私、寝てる時に寝言なんて言うんだ…知らなかった。
良かった、跡部が忘れてくれて。
ウィーン
地下に着くと、広い駐車場に一際目立つ車が止まっている事に気づく。
あれって…ロールスロイス…?あんな高級車、うちの駐車場で見たことないわよ。
チラッと跡部を見上げると何食わぬ顔で車のキーを手に取り車に乗り込む。
「えっ…跡部が運転するの?」
「他に誰がいるんだ」
「そりゃ、確かに…」
けど跡部が運転するなんて想像が出来ない。でも考えてみればあの頃は学生だったし、今は免許くらい持っているか…
「お、お願いします」
傷をつけないように細心の注意を払いながら助手席に乗り込む。