俺様*跡部
社長室の扉にもたれ掛かり腕を組んでいる人物に大きく目を見開く。
「あ…とべ?」
「あぁ。久し振りだな」
そこには氷帝時代に同級生だった跡部がいて、何も変わっていない彼の姿に目を擦る。
「何で跡部がここにいるのよ…」
「ま、話せば長くなるんだが…お前の親父から現状を聞いてな」
跡部はニヤニヤしながら社長室に入ってくる。
氷帝学園時代と言っても、跡部は超有名人、私は一般人みたいな存在だった。誰でも知っている跡部は存在がカリスマで彼の一言で天地が変わってしまうような人。
何故か3年間クラスが一緒で、話すことがいつからか増えて卒業する頃にはお互い皮肉を言い合うような仲になった。
けど彼は卒業後すぐにプロのテニスプレーヤーになり海外を飛び回っていたのを聞いていたし私も仕事が忙しくて全然会えずに数年が経っていた。
それで、今に至る。
「出世したな」
「…跡部に言われたくないわよ」
跡部は今や全国を巡るテニスプレーヤー兼、自身の会社まで難なく引き継いでいる化け物だ。
私はこんなにボロボロなのに、肌が艶々している跡部が憎たらしい。それくらい今の私に余裕なんてないのだ。
「わざわざ俺様が会いに来てやったんだから茶くらい出せ」
「…会いに来てなんて言ってない。自分から来たくせに相変わらずねその態度」
茶なんて似合う顔してないくせに、と思いながらもティーセットを出してローズティーを淹れる。
その爽やかな甘い香りに、少しだけ癒された。