~Maple tree~ VI-5
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アカネとマンションの一階にあるエントランスホールに来た。
警備室があり、ワタルが友人だと話してくれたおかげで助かった。
アカネはエントランスにあるソファーに腰掛ける。俺もそれに倣う。
「…さっきママと喧嘩した」
「ああ」
「ママ…再婚するって言い出してさ…」
思わず息を呑んだ。項垂れる。
「ママはさ、私にパパの話何もしてくれないんだ…」
「…そうか」
「あんたさ、彼女いるの?」
アカネにそう言われ、顔を上げた。
「…ああ、いた」
「別れたの?」
「いや…、彼女が大学院を卒業したら入籍する予定だった…だけど、いなくなってしまった…」
「なんで? いなくなったの?」
「俺が悪いんだ…」
本当に。俺のミスだ。
「…あんたもさ、その人以外と付き合わないの?」
「付き合わない…、彼女が俺と生きる未来を選んでくれたように俺もそれに応えたいから…出来ない」
「…純情だね」
アカネはそう言った。
「…君はお母さんに再婚してほしくない?」
「…どっちでもいい…。どうせ、再婚したら私は邪魔になるんだし…」
「だから、アルバイトを?」
「…ううん、アルバイト先の旅館…私のおばあちゃんの家なんだ。ママとおばあちゃん…、結婚したのをきっかけに仲悪くなっちゃってさ、私が二人の間に入って、パイプみたいな役をしている。私は本当…は…」
「うん」
「家族で暮らしたかった…」
アカネは寂しそうな顔をした。
すると、アカネの髪にある髪留めに目がいく。
楓と同じ、紅葉の形をした髪留め。
俺は、胸ポケットからそれを取り出した。
「あっ! 私のと一緒じゃん」
「…ああ、俺の彼女のやつだ。ずっと預かっているんだ…」
「…あのさ、ママさ。土曜日にさ、アンタの話していたよ。パパにそっくりな人が職場に来て…って…だけどさ、ママ…。パパの仏壇の前で泣いていたんだ…。ママはさ、落ち込んだり悲しい事があるとさ、飲めないくせにさ…ジンとかウィスキー飲んでいる…」
それに思わず目を見開いた。
俺がよく飲むやつ。
この世界の俺も酒呑み だったかもしれない。こっちの世界の楓も縋りたかったのかもしれない。
俺のように。俺は、楓がいなくなってから楓が好きだった物をよく口にした。
日本茶。アメリカでも、グリーンティーという名前で手に入るものだ。
俺は、それに苦笑し、アカネに続ける。
「俺も…彼女が消えた時に、酒ばっか呑んだよ。朝から晩まで酒を呑んで、そこら辺をブラブラして、仕事にも行かず…な」
「アンタ、それはママより酷いね」
「君のお母さんは、俺より強いよ」
俺が耐えられなかった事をずっと耐えて来たんだ。
大切な人がいなくなる…こんなに辛い事だったなんて思わなかった。
「…アンタにこれあげる」
アカネは髪飾りを取ると、俺に渡した。
「君のだろう?」
「おばあちゃんにずっと言われていたから…、同じ物を持っている人にあげなさいって」
俺はそれを受け取る。
「ありがとう」
すると、タイミングよくエレベーターが開くと楓が走って出てきた。
「茜!」
「…ママ」
二人が俺の前にお互いが対面するように立つ。
奇妙な組み合わせだが、本来のこの世界での家族だった。
この世界での俺がいなくなって、この家族はそれぞれ違う物に縋った。
楓は死んだ俺に向けた愛情に、アカネは母親を置いてきぼりにした死んだ俺への憎悪に。
縋った相手は俺だが、それぞれ意味合いが違う。
二人は、俺の前で謝罪会を始めた。二人が何を思い、何を感じたかは分からない。
警備室があり、ワタルが友人だと話してくれたおかげで助かった。
アカネはエントランスにあるソファーに腰掛ける。俺もそれに倣う。
「…さっきママと喧嘩した」
「ああ」
「ママ…再婚するって言い出してさ…」
思わず息を呑んだ。項垂れる。
「ママはさ、私にパパの話何もしてくれないんだ…」
「…そうか」
「あんたさ、彼女いるの?」
アカネにそう言われ、顔を上げた。
「…ああ、いた」
「別れたの?」
「いや…、彼女が大学院を卒業したら入籍する予定だった…だけど、いなくなってしまった…」
「なんで? いなくなったの?」
「俺が悪いんだ…」
本当に。俺のミスだ。
「…あんたもさ、その人以外と付き合わないの?」
「付き合わない…、彼女が俺と生きる未来を選んでくれたように俺もそれに応えたいから…出来ない」
「…純情だね」
アカネはそう言った。
「…君はお母さんに再婚してほしくない?」
「…どっちでもいい…。どうせ、再婚したら私は邪魔になるんだし…」
「だから、アルバイトを?」
「…ううん、アルバイト先の旅館…私のおばあちゃんの家なんだ。ママとおばあちゃん…、結婚したのをきっかけに仲悪くなっちゃってさ、私が二人の間に入って、パイプみたいな役をしている。私は本当…は…」
「うん」
「家族で暮らしたかった…」
アカネは寂しそうな顔をした。
すると、アカネの髪にある髪留めに目がいく。
楓と同じ、紅葉の形をした髪留め。
俺は、胸ポケットからそれを取り出した。
「あっ! 私のと一緒じゃん」
「…ああ、俺の彼女のやつだ。ずっと預かっているんだ…」
「…あのさ、ママさ。土曜日にさ、アンタの話していたよ。パパにそっくりな人が職場に来て…って…だけどさ、ママ…。パパの仏壇の前で泣いていたんだ…。ママはさ、落ち込んだり悲しい事があるとさ、飲めないくせにさ…ジンとかウィスキー飲んでいる…」
それに思わず目を見開いた。
俺がよく飲むやつ。
この世界の俺も
俺のように。俺は、楓がいなくなってから楓が好きだった物をよく口にした。
日本茶。アメリカでも、グリーンティーという名前で手に入るものだ。
俺は、それに苦笑し、アカネに続ける。
「俺も…彼女が消えた時に、酒ばっか呑んだよ。朝から晩まで酒を呑んで、そこら辺をブラブラして、仕事にも行かず…な」
「アンタ、それはママより酷いね」
「君のお母さんは、俺より強いよ」
俺が耐えられなかった事をずっと耐えて来たんだ。
大切な人がいなくなる…こんなに辛い事だったなんて思わなかった。
「…アンタにこれあげる」
アカネは髪飾りを取ると、俺に渡した。
「君のだろう?」
「おばあちゃんにずっと言われていたから…、同じ物を持っている人にあげなさいって」
俺はそれを受け取る。
「ありがとう」
すると、タイミングよくエレベーターが開くと楓が走って出てきた。
「茜!」
「…ママ」
二人が俺の前にお互いが対面するように立つ。
奇妙な組み合わせだが、本来のこの世界での家族だった。
この世界での俺がいなくなって、この家族はそれぞれ違う物に縋った。
楓は死んだ俺に向けた愛情に、アカネは母親を置いてきぼりにした死んだ俺への憎悪に。
縋った相手は俺だが、それぞれ意味合いが違う。
二人は、俺の前で謝罪会を始めた。二人が何を思い、何を感じたかは分からない。