~Maple tree~ VI-3
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「今日会った楓…さんは…」
俺が言いかけない内に、ワタルはホワイトボードにサラサラと計算式を書きながら「おー」と返事した。
「あー、楓さん? あの人、もう恋なんてしねーって言っていたぞ」
「…恋?」
「あの人、未亡人で38歳の子持ちだぞ」
俺は目を見開いた。
「…?! ば、馬鹿な…」
「楓さん、若いよな。よく、色々な奴らに言い寄られているよ」
「楓は、誰と結婚したんだ?!」
「…知りたいか」
「知りたい!」
そう言って、ワタルはデスクトップタイプのパソコンを起動した。
パソコンの電源が入り、ワタルはGoogleを起動し、そこにとあるワードを打ち込む。
9・11。
検索結果の中にあるとあるページを開いた。
911において、若き警察官のお手柄という記事。
その記事をクリックして表示したものを見て、俺は目を見開いた。
そこには、若かりし頃の俺がいたから。
「ど、ど、どういう、え? はぁあ?」
俺は前髪を押し上げて、頭を抱えた。
「…あはは、動揺しすぎ」
「動揺しない方がおかしいだろっ!?」
「名前は、確か…、そうそう! レオンって名前で…苗字もケネディ! あははっ!……、えぇぇぇぇーー!? はぁぁあっ!?」
一番動揺するワタルに苦笑した。
「なんや、これはぁっ!? はぁああっ?」
俺はその記事を読んでいく。この世界の俺は警察官をしていた。
15年前に発生したアメリカ同時多発テロの際に、ニューヨークにてワールドトレードセンター内の避難誘導を買って出たのだが、救助が終わった直後に、暴走した車両に轢かれて死ぬという終わり方だった。
何というか、俺らしい終わり方に苦笑しかない。
話を読んでいくと、最後の方に遺族にインタビューをするという、配慮の欠片もない記事が目に入った。
記事を読んでいると、写真があったのだが彼女が妊娠をしていたのが分かり、固まる。
思わず息を呑んだ。記事には臨月で、来月出産予定と書かれている。そんな事を大衆記事にする新聞社に反吐がでる。
“夫の名誉ある殉職に、国のために命を落とした事を恥じる事なく、生きていきます”
楓の言葉を引用したそれを読み、胸が痛む。
もし、自分が実際にそうなったら?
楓が消えずに今でもアメリカで暮らしていて、俺が仕事で死んだら。
きっと、この世界の楓のように生きていくのだ。
もし、その時に妊娠していたら、彼女が宿した俺の子は俺を知らずに生きて、俺はその子を知らずに死んでいく。
ゾッとした。
「…はあ、まあ今は…、この世界で生きながら、ここに来た理由を考えよう」
ワタルに言われ、俺はため息をした。
「実際俺達の世界Bも仮想現実かもしれないし、それは誰にも分からないけど…」
「…少しこの本貸してくれるか?」
「勿論、家にあるもんは何でも使ってくれていいよ」
ワタルはそう言うと、ゲーム機の電源をおとした。
俺は借りた本のゲームのシナリオを何度も読み返した。俺の世界で、楓にもう一度会うために必要な事を俺がやっていないのかもしれない。
だが、読み返しても、過去は変えられない。
俺が彼女の為に出来ることは何もない。
シャワーを交代で浴びた。
「レオン! あのさ、俺もう少し、レオンの世界の話を聞きたくてさ…」
俺はふと思い出した事があった。
楓の実家にまつわる伝記や池の話だ。
フユキのご先祖がその土地を焼き払い、感染症を蔓延させず、防いだ池だ。
結局俺はそれがどこかさえ、分からないままだった。
その辺りをしっかりと聞いていればと後悔した。
「な、なあ…、京都で昔疫病って流行ったか?」
俺がそう聞くと、「コレラじゃなくて?」と答える。
「コレラじゃない」
「あー、もしかして、屍病の事か?」
「それだ! それの原因になった場所ってどこだ!?」
あまりの剣幕にワタルは驚いた顔をしたが、すぐに「知っているよ」と言ってくれた。
「この辺りじゃ、すげー有名でさ。明日行ってみようぜ」
ワタルに提案され、俺は頷いた。
つづく
俺が言いかけない内に、ワタルはホワイトボードにサラサラと計算式を書きながら「おー」と返事した。
「あー、楓さん? あの人、もう恋なんてしねーって言っていたぞ」
「…恋?」
「あの人、未亡人で38歳の子持ちだぞ」
俺は目を見開いた。
「…?! ば、馬鹿な…」
「楓さん、若いよな。よく、色々な奴らに言い寄られているよ」
「楓は、誰と結婚したんだ?!」
「…知りたいか」
「知りたい!」
そう言って、ワタルはデスクトップタイプのパソコンを起動した。
パソコンの電源が入り、ワタルはGoogleを起動し、そこにとあるワードを打ち込む。
9・11。
検索結果の中にあるとあるページを開いた。
911において、若き警察官のお手柄という記事。
その記事をクリックして表示したものを見て、俺は目を見開いた。
そこには、若かりし頃の俺がいたから。
「ど、ど、どういう、え? はぁあ?」
俺は前髪を押し上げて、頭を抱えた。
「…あはは、動揺しすぎ」
「動揺しない方がおかしいだろっ!?」
「名前は、確か…、そうそう! レオンって名前で…苗字もケネディ! あははっ!……、えぇぇぇぇーー!? はぁぁあっ!?」
一番動揺するワタルに苦笑した。
「なんや、これはぁっ!? はぁああっ?」
俺はその記事を読んでいく。この世界の俺は警察官をしていた。
15年前に発生したアメリカ同時多発テロの際に、ニューヨークにてワールドトレードセンター内の避難誘導を買って出たのだが、救助が終わった直後に、暴走した車両に轢かれて死ぬという終わり方だった。
何というか、俺らしい終わり方に苦笑しかない。
話を読んでいくと、最後の方に遺族にインタビューをするという、配慮の欠片もない記事が目に入った。
記事を読んでいると、写真があったのだが彼女が妊娠をしていたのが分かり、固まる。
思わず息を呑んだ。記事には臨月で、来月出産予定と書かれている。そんな事を大衆記事にする新聞社に反吐がでる。
“夫の名誉ある殉職に、国のために命を落とした事を恥じる事なく、生きていきます”
楓の言葉を引用したそれを読み、胸が痛む。
もし、自分が実際にそうなったら?
楓が消えずに今でもアメリカで暮らしていて、俺が仕事で死んだら。
きっと、この世界の楓のように生きていくのだ。
もし、その時に妊娠していたら、彼女が宿した俺の子は俺を知らずに生きて、俺はその子を知らずに死んでいく。
ゾッとした。
「…はあ、まあ今は…、この世界で生きながら、ここに来た理由を考えよう」
ワタルに言われ、俺はため息をした。
「実際俺達の世界Bも仮想現実かもしれないし、それは誰にも分からないけど…」
「…少しこの本貸してくれるか?」
「勿論、家にあるもんは何でも使ってくれていいよ」
ワタルはそう言うと、ゲーム機の電源をおとした。
俺は借りた本のゲームのシナリオを何度も読み返した。俺の世界で、楓にもう一度会うために必要な事を俺がやっていないのかもしれない。
だが、読み返しても、過去は変えられない。
俺が彼女の為に出来ることは何もない。
シャワーを交代で浴びた。
「レオン! あのさ、俺もう少し、レオンの世界の話を聞きたくてさ…」
俺はふと思い出した事があった。
楓の実家にまつわる伝記や池の話だ。
フユキのご先祖がその土地を焼き払い、感染症を蔓延させず、防いだ池だ。
結局俺はそれがどこかさえ、分からないままだった。
その辺りをしっかりと聞いていればと後悔した。
「な、なあ…、京都で昔疫病って流行ったか?」
俺がそう聞くと、「コレラじゃなくて?」と答える。
「コレラじゃない」
「あー、もしかして、屍病の事か?」
「それだ! それの原因になった場所ってどこだ!?」
あまりの剣幕にワタルは驚いた顔をしたが、すぐに「知っているよ」と言ってくれた。
「この辺りじゃ、すげー有名でさ。明日行ってみようぜ」
ワタルに提案され、俺は頷いた。
つづく