~Maple tree~ VI-3
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銀行で換金後、ワタルに連れられて来たのは衣料品店である。
それは、『シマムラ』という楓がよく着ていた服を販売している店だった。
店内は広く、女性もの、男性もの、子供もの、リネン類が所狭しと並ぶ店だった。
価格が安価だが、種類は多い。
アメリカにも、格安の服屋はある。
楓はアメリカで服屋に行く事があまりなかった。
日本から持ち込んだ服で、縫い目に穴があいたら縫っているのを目撃してから、彼女に口実をつけて服を買わせようとした事が度々あった。
バスの運賃の残りもそうだったし、「勉強頑張っているから」と言って渡した時、「私は勉強する為にアメリカに来たから、頑張るのは当たり前」と論破され、受け取ってもらえなかった。
さらには、時々例の彼女の節制したそれで喧嘩ではないが、彼女を泣かせた事もあった。
贅沢はしてはいけないと言われた時やショッピングモールで俺が渡したお金を使えず、彼女があそこまで生きる為に必要だったお金に纏わる事が彼女を苦しめ続けた。
ワタルは、シマムラでしか服を買わないシマラーという一族。
俺に貸してくれた服もシマムラ。
そこで服を何着か購入した。
ワタルと共にマンションに帰宅する頃には夕方になっていた。
ワタルは自炊をする。今日はカレーライスだ。楓が作る料理で上位に入るくらいに好きだった料理。
楓が作るカレーは、野菜が多く肉は少ない。野菜でカサ増ししたカレー。
ワタルの手伝いで一緒に野菜を切った。
俺の手付きに、「上手い」と褒めてくれた。元々自炊してきたし、南米ではヘビやワニ、時にはカエルだって食べた。
それらを食べるには、テクニックが必要だ。
カレーライスを二人で食べる。
その後、俺は後片付けをし、ワタルは洗濯を畳んだ。
そのあとに、シャワーを交代で浴びた後のフリー時間。ワタルは、冷蔵庫から第三のビールを取り出し俺にも渡してくれた。
テレビ脇の機械の元に移動する。
そこに積み上げられたDVDのパッケージを一つ開けて、機械の電源を入れるとディスクを挿入した。
「さぁーて、久しぶりにゲームするぜ!」
と言い出したワタルが始めたゲームを見て俺は固まる。
「…え? ぉ、俺…」
「そうそう、これはbiohazard4! プレステ2version。レオンが主役のゲーム」
ワタルは俺をチラッと見た後に、ニューゲームモードの難易度が高いモードでプレイする。
最初に物語のプロローグが語られる。それは、俺がいた世界で起きていた出来事を掻い摘んで説明したものだった。
俺は不思議な気持ちになりながら、それを見守る。
ワタルはこの俺を操作するゲームはかなり上手い。サクサク進めていく。
しばらくプレイした後に、セーブポイントでセーブをしたあとに、思い出したように次のディスクに切り替えて別のゲームをする。
今度は『閃光のPHOENIX』。
近未来的な世界で巻き起こるバイオテロや事件に“brave”というロボットをカスタマイズして、事件に立ち向かう組織、HOFのフユキ・タチバナになり、操作するゲームだ。
かなりやり込み系のゲームで何度も同じステージを回り、何度もアイテムドロップを狙う。
しばらくゲームをしていたワタルは俺に尋ねて来た。
「なあ、レオンがいたアメリカはどういう国だった?」
「…アメリカは…、たくさん思い出がある国だ」
たくさんある。
「めちゃくちゃ抽象的だな」
「…俺はアメリカで大事な女の子に出会った。その子は日本人で、音楽の勉強する為に留学して来たんだ」
「そうなんだ…」
「俺はその子と結婚の約束をした」
「へー! いいじゃん」
「でも、出来なかった」
ワタルは俺を見てきた。
「なんで?」
「彼女が消えてしまったから」
俺の腕の中で消えた彼女。
最後の「また私を見つけて」という言葉を残して。
すると、ワタルはゲームをステータス画面にすると立ち上がり、壁にあるホワイトボードの前に移動した。
「レオン…、もっかい説明して」
ワタルはホワイトボードにサラサラと色々書き出した。
「レオンは、何年のアメリカから来た?」
「俺は…2007年の2月の下旬くらいだったな…」
「今は、2016年2月14日。タイムラグが10年ある。んで、レオンはこの時代に来る直前にどうしていた?」
「…車に乗っていた」
「その車って…どんな車?」
「今、ワタルがプレイしていたゲームの主人公が乗っている車と同じやつ」
「PHOENIXって事?」
「そうだ、PHOENIX」
ワタルはホワイトボードの端にサラサラと書いていく。
「何か運転してる時に変わった事があったか?」
「時速160キロオーバーで、渓谷に落ちた」
「それって…」
「自殺じゃない」
ワタルがホッとした表情をした。
「…俺は、彼女が消えてから…一緒に住んでいた家があったんだけど、帰れなくなったんだ…、あの家は…たくさん彼女との…思い出があって…」
「…レオン」
「…悪い」
俺は、あの家を思い出すだけでも辛かった。楓と僅かな期間だが暮らしたあの家。
未来の事もたくさん想像したし、彼女が俺の子供を産んでくれて、仲良く暮らしている様子や俺が子供のために世話を焼いてやる様子も何度も想像し、それがもう出来ないんだという事を理解した時に無性に虚しくなった。
それは、『シマムラ』という楓がよく着ていた服を販売している店だった。
店内は広く、女性もの、男性もの、子供もの、リネン類が所狭しと並ぶ店だった。
価格が安価だが、種類は多い。
アメリカにも、格安の服屋はある。
楓はアメリカで服屋に行く事があまりなかった。
日本から持ち込んだ服で、縫い目に穴があいたら縫っているのを目撃してから、彼女に口実をつけて服を買わせようとした事が度々あった。
バスの運賃の残りもそうだったし、「勉強頑張っているから」と言って渡した時、「私は勉強する為にアメリカに来たから、頑張るのは当たり前」と論破され、受け取ってもらえなかった。
さらには、時々例の彼女の節制したそれで喧嘩ではないが、彼女を泣かせた事もあった。
贅沢はしてはいけないと言われた時やショッピングモールで俺が渡したお金を使えず、彼女があそこまで生きる為に必要だったお金に纏わる事が彼女を苦しめ続けた。
ワタルは、シマムラでしか服を買わないシマラーという一族。
俺に貸してくれた服もシマムラ。
そこで服を何着か購入した。
ワタルと共にマンションに帰宅する頃には夕方になっていた。
ワタルは自炊をする。今日はカレーライスだ。楓が作る料理で上位に入るくらいに好きだった料理。
楓が作るカレーは、野菜が多く肉は少ない。野菜でカサ増ししたカレー。
ワタルの手伝いで一緒に野菜を切った。
俺の手付きに、「上手い」と褒めてくれた。元々自炊してきたし、南米ではヘビやワニ、時にはカエルだって食べた。
それらを食べるには、テクニックが必要だ。
カレーライスを二人で食べる。
その後、俺は後片付けをし、ワタルは洗濯を畳んだ。
そのあとに、シャワーを交代で浴びた後のフリー時間。ワタルは、冷蔵庫から第三のビールを取り出し俺にも渡してくれた。
テレビ脇の機械の元に移動する。
そこに積み上げられたDVDのパッケージを一つ開けて、機械の電源を入れるとディスクを挿入した。
「さぁーて、久しぶりにゲームするぜ!」
と言い出したワタルが始めたゲームを見て俺は固まる。
「…え? ぉ、俺…」
「そうそう、これはbiohazard4! プレステ2version。レオンが主役のゲーム」
ワタルは俺をチラッと見た後に、ニューゲームモードの難易度が高いモードでプレイする。
最初に物語のプロローグが語られる。それは、俺がいた世界で起きていた出来事を掻い摘んで説明したものだった。
俺は不思議な気持ちになりながら、それを見守る。
ワタルはこの俺を操作するゲームはかなり上手い。サクサク進めていく。
しばらくプレイした後に、セーブポイントでセーブをしたあとに、思い出したように次のディスクに切り替えて別のゲームをする。
今度は『閃光のPHOENIX』。
近未来的な世界で巻き起こるバイオテロや事件に“brave”というロボットをカスタマイズして、事件に立ち向かう組織、HOFのフユキ・タチバナになり、操作するゲームだ。
かなりやり込み系のゲームで何度も同じステージを回り、何度もアイテムドロップを狙う。
しばらくゲームをしていたワタルは俺に尋ねて来た。
「なあ、レオンがいたアメリカはどういう国だった?」
「…アメリカは…、たくさん思い出がある国だ」
たくさんある。
「めちゃくちゃ抽象的だな」
「…俺はアメリカで大事な女の子に出会った。その子は日本人で、音楽の勉強する為に留学して来たんだ」
「そうなんだ…」
「俺はその子と結婚の約束をした」
「へー! いいじゃん」
「でも、出来なかった」
ワタルは俺を見てきた。
「なんで?」
「彼女が消えてしまったから」
俺の腕の中で消えた彼女。
最後の「また私を見つけて」という言葉を残して。
すると、ワタルはゲームをステータス画面にすると立ち上がり、壁にあるホワイトボードの前に移動した。
「レオン…、もっかい説明して」
ワタルはホワイトボードにサラサラと色々書き出した。
「レオンは、何年のアメリカから来た?」
「俺は…2007年の2月の下旬くらいだったな…」
「今は、2016年2月14日。タイムラグが10年ある。んで、レオンはこの時代に来る直前にどうしていた?」
「…車に乗っていた」
「その車って…どんな車?」
「今、ワタルがプレイしていたゲームの主人公が乗っている車と同じやつ」
「PHOENIXって事?」
「そうだ、PHOENIX」
ワタルはホワイトボードの端にサラサラと書いていく。
「何か運転してる時に変わった事があったか?」
「時速160キロオーバーで、渓谷に落ちた」
「それって…」
「自殺じゃない」
ワタルがホッとした表情をした。
「…俺は、彼女が消えてから…一緒に住んでいた家があったんだけど、帰れなくなったんだ…、あの家は…たくさん彼女との…思い出があって…」
「…レオン」
「…悪い」
俺は、あの家を思い出すだけでも辛かった。楓と僅かな期間だが暮らしたあの家。
未来の事もたくさん想像したし、彼女が俺の子供を産んでくれて、仲良く暮らしている様子や俺が子供のために世話を焼いてやる様子も何度も想像し、それがもう出来ないんだという事を理解した時に無性に虚しくなった。