司類SSまとめ

「……なんというか、お前は本当に見た目詐欺が過ぎるな。」

次回のショーで使いたい大がかりな仕掛けがあるんだ、と類が相談を持ちかけて来たのは数日前のこと。
それならこっちも衣装の素材について提案がある。直接見て貰いたいんだが、今度の日曜日は空いているか?と聞けば二つ返事でOKされ今に至る…のだが。

「なんだい、急に。」

興味無さげな顔でハンバーグを口に運んでいる類の皿には、一切れのポテトもグラッセも残っていない。激しい攻防の末に、全てが俺のサラダの上へと移動したからだ。

「いや、お前は黙っていればその顔も相まって物憂げな魅力があるだろう?
 とてもじゃないが、人に嫌いな野菜を押し付けた挙句、パスタを一口奪っていく奴には見えないと思ってな。」

くるくるとパスタを巻きながら、からかい混じりに口走る。

しかしいつもなら直ぐに無茶な提案でこちらを丸め込もうとする類が一向に言い返して来ない。不思議に思い視線をパスタから上に向けると、そこには。

「……こんなところ、司くんしか知らないんだから。当たり前じゃないか。」

ふいっと逸らされた顔は、髪に隠れて表情は読めない。けどその隙間から覗く耳は、嬉しそうに頼んでいたケーキの苺のようで。

「…そ、うか。そう、だな?」

無言。やけに顔が熱い。謎の優越感のような、今すぐ叫び出したいような、そんな良くわからない感情が暴れだす。

沈黙を誤魔化すように口に運んだ人参のグラッセはやけに甘くて、俺も類から目を逸らすしか無かった。
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