ハッピー×ハッピー
・腐向け(予定)
・出久×夢主
・暴力描写や悲惨な描写を含みます
なんでも許せる方のみどうぞ
・・・
緑谷出久がそれに気付いたのは偶然だった。
次の授業のための教室移動、器具の片付けをしていたため遅れてしまったと道を急ぐ中。彼を見つけたのだ。
校舎の隅の隅、生徒どころか先生すら全く通らないその場所で背中を預けべたりと座り込む人影。
体調が悪いのだろうかと声をかけようと覗き込んだその瞬間、息を飲み込む。
くっきりと浮かぶ色濃い隈、ボサボサの目を覆い隠す程の前髪、そしてその隙間から覗く濁り切った瞳。
虚ろなその瞳はぱちぱちと瞬いた後ゆっくりと出久へと向けられた。
「………………」
こちらを見つめた彼はへらりと笑って何か言いたげに口を閉じたり開いたりを繰り返したが、諦めたのか、はたまた面倒になったのかそのまま口を閉ざしてしまった。
そのまま少し沈黙が流れるが、そこで出久は目的を思い出す。
「えっと…きみ、大丈夫?体調が悪いなら医務室まで付き合うよ。」
今度こそ手を差し伸べると彼は驚いたような顔をしてこちらを見つめて来た。おずおずと伸ばされた手はかなり熱くて掴む力も弱い。これは不味いと立ち上がらせ、何も言わない彼の腕を自分の肩にかけて保健室へと歩き始める。
「喋るのが辛いならそのままでいいよ。……吐き気は無い?」
コクリと首を縦に降ってくれたので胸を撫で下ろす。なるべく負担の無いようにゆっくり歩いていると始業のベルが鳴る。それに反応したのか、そこで彼が始めて口を開いた。
「……ベル、鳴ったけど。」
「?……あ!うん、大丈夫だよ。具合が悪い人を放って置けなかっただけだから。心配してくれてありがとう。」
「……そう、なんだ。」
ぽつぽつと話してはいるけれど、どこか呂律の回っていない様子に少しだけ足を早める。またしばらく無言の間が続いて無事に保健室の近くまでたどり着くと、彼が肩をぽんぽんと叩きながら再び話し始める。
「ここまででいいよ。ありがとう。」
「本当に?もう少しだからそこまで……。」
「だいぶ良くなってきたから大丈夫。早く授業戻った方が良いよ。」
……嘘ではないみたいだ。不思議なことに廊下で蹲っていた時より顔色は良く、呂律も回るようになっているようだから。それなら、と後ろ髪を惹かれつつも引き返すと慌てたように声をかけられた。
「ごめん、忘れてた!先生になんか言われたら「保健室の幸与幸」に付き添ってたって言えば大丈夫だから!」
「?うん、分かった。お大事にね、幸与くん。」
「幸でいいよ。……え〜っと。」
「緑谷出久。僕も出久でいいよ。」
「……そっか。ありがとね、出久。」
どういたしまして、と答えて教室へと歩を進め、次第に少し駆け足になりながら考える。学内であまり見たことの無い顔の彼。どうしてあんな校舎の隅で蹲っていたのかとか、そもそもどの学年なのかなんて事よりも、別れ際の彼が見せたどこか寂しげな笑顔の方が気になってしまい。何処かモヤモヤした気持ちを抱えたまま教室へと急ぐのであった。
・出久×夢主
・暴力描写や悲惨な描写を含みます
なんでも許せる方のみどうぞ
・・・
緑谷出久がそれに気付いたのは偶然だった。
次の授業のための教室移動、器具の片付けをしていたため遅れてしまったと道を急ぐ中。彼を見つけたのだ。
校舎の隅の隅、生徒どころか先生すら全く通らないその場所で背中を預けべたりと座り込む人影。
体調が悪いのだろうかと声をかけようと覗き込んだその瞬間、息を飲み込む。
くっきりと浮かぶ色濃い隈、ボサボサの目を覆い隠す程の前髪、そしてその隙間から覗く濁り切った瞳。
虚ろなその瞳はぱちぱちと瞬いた後ゆっくりと出久へと向けられた。
「………………」
こちらを見つめた彼はへらりと笑って何か言いたげに口を閉じたり開いたりを繰り返したが、諦めたのか、はたまた面倒になったのかそのまま口を閉ざしてしまった。
そのまま少し沈黙が流れるが、そこで出久は目的を思い出す。
「えっと…きみ、大丈夫?体調が悪いなら医務室まで付き合うよ。」
今度こそ手を差し伸べると彼は驚いたような顔をしてこちらを見つめて来た。おずおずと伸ばされた手はかなり熱くて掴む力も弱い。これは不味いと立ち上がらせ、何も言わない彼の腕を自分の肩にかけて保健室へと歩き始める。
「喋るのが辛いならそのままでいいよ。……吐き気は無い?」
コクリと首を縦に降ってくれたので胸を撫で下ろす。なるべく負担の無いようにゆっくり歩いていると始業のベルが鳴る。それに反応したのか、そこで彼が始めて口を開いた。
「……ベル、鳴ったけど。」
「?……あ!うん、大丈夫だよ。具合が悪い人を放って置けなかっただけだから。心配してくれてありがとう。」
「……そう、なんだ。」
ぽつぽつと話してはいるけれど、どこか呂律の回っていない様子に少しだけ足を早める。またしばらく無言の間が続いて無事に保健室の近くまでたどり着くと、彼が肩をぽんぽんと叩きながら再び話し始める。
「ここまででいいよ。ありがとう。」
「本当に?もう少しだからそこまで……。」
「だいぶ良くなってきたから大丈夫。早く授業戻った方が良いよ。」
……嘘ではないみたいだ。不思議なことに廊下で蹲っていた時より顔色は良く、呂律も回るようになっているようだから。それなら、と後ろ髪を惹かれつつも引き返すと慌てたように声をかけられた。
「ごめん、忘れてた!先生になんか言われたら「保健室の幸与幸」に付き添ってたって言えば大丈夫だから!」
「?うん、分かった。お大事にね、幸与くん。」
「幸でいいよ。……え〜っと。」
「緑谷出久。僕も出久でいいよ。」
「……そっか。ありがとね、出久。」
どういたしまして、と答えて教室へと歩を進め、次第に少し駆け足になりながら考える。学内であまり見たことの無い顔の彼。どうしてあんな校舎の隅で蹲っていたのかとか、そもそもどの学年なのかなんて事よりも、別れ際の彼が見せたどこか寂しげな笑顔の方が気になってしまい。何処かモヤモヤした気持ちを抱えたまま教室へと急ぐのであった。
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