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Die Neue These版ファーレンハイト相手

あれから、集まった皆はどこの店の何が美味しいとかクリスマスや年末は集まれそうならどうしようかといった他愛ない事を話してからお開きになった。
エリザベートとファーレンハイトは、共にホーエンツォレルン邸に戻った。
帝都のハロウィンの賑やかしさとは反対に、ホーエンツォレルン邸は物静かだった。
「――エリザベートお嬢様、ファーレンハイト様。おかえりなさいませ」
「先に寝ていてもよかったのに、ティルピッツ」
「主より先に寝る執事が、どこにおりましょうや。それにローエングラム元帥からお嬢様のお美しい写真を戴きましては、眠れなくなるもの」
「仕方ないなぁ、もう……ほらほら、今日くらいしかしないから目に焼き付けるように」
ゾロゾロと出てきた使用人たちに対しても、エリザベートは嫌な顔をせずに対応する。
その時、
「シシィ」
「どうしたの、アード」
「私と、踊ってはくれないか」
ファーレンハイトは、そっと右手を差し出して来た。
「……ええ、いいわよ」
拒む理由もないので、エリザベートはファーレンハイトの右手と自らの左手を重ねた。
片や伯爵令嬢、片や魔術師のハロウィン限定のダンスパーティー。
「シシィ、“Trick or Treat”と言ってくれないか」
「いいけど……どうして?」
「いいから」
「“Trick or Treat!”、アード」
「では、私からは甘いのを」
次の瞬間、ファーレンハイトに唇を奪われた。
「…………………………………………!!」
使用人たちは、キャーッ!と黄色い悲鳴を上げている。
「申し訳ないが、熱いお湯を風呂場に入れてくれないか。それと、シシィの好きなローズポプリをたくさん私が使わせてもらっている部屋のベッドに……頼んだ」
呆然としているエリザベートをよそに、ファーレンハイトは艦隊を指揮するように指示を出していく。
「お風呂場は既にご用意させていただいております!ベッドは今すぐに!」
ティルピッツたちは、大慌てで動き出す。
「そうか、ありがとう」
軽々とエリザベートを姫抱きにしたファーレンハイトは、そのまま真っ直ぐ風呂場へと向かっていく。
「……ちょっと待って!何をするつもりなのアード」
「何って…………SEXだろ?」
「いや、分かってるけどなんで?」
「今度は私から言おう、“Trick or Treat!”」
その言葉を聞いた瞬間、金縛りにあったかのようにエリザベートは動かなくなった。 
「何にも用意していないんだろう?なら、君を悪戯して甘いものをもらわないとな」
「ど……どちらかのは、ず……」
「俺を嫉妬させておいて、簡単に許してもらえるとは思わないことだ」
「アード……あなた嫉妬してたの?」
「残念だが……いつも、だ」
ようやく下ろしてもらえたかと思ったら、そのままドレスを脱がしにかかられる。
「待っ、待ってアード…………!」
「今度は、俺好みのドレスを着せたいものだ」
ラインハルトの好みによって美しく彩られたエリザベートを、ファーレンハイトは確かに美しいとは思った。
文句なしに美しく、まさに世界にまたとない薔薇のように。
……が、正直なところ自分の手によって「女」になっていないので、心に仄暗いものが宿っていた。
せめて、彼女の意志でバンシーになるなら許したものを……。
ドレスを脱がすと、普段は軍服の下にあって決して晒されることのない白く柔らかい肌が露わになる。
「後で、前に買ったあの下着でも着てもらおうか」
「え、あれを…………?」
エリザベートは、ファーレンハイトの言う下着がどの下着かを察した上で渋る。
「着たらいっぱい可愛がってやるんだ……着るだろ?」
あの低くよく響く声で腰を撫でながら耳元で囁かれたら、抵抗などできる訳が無い。
「ずるい……」
「それは悪かったな」
そうして、ファーレンハイトは無造作に魔術師の服を脱いでいく。
すると、とても魔術師らしからぬ逞しい体躯が現れる。
――見なかったことにしておこう。
一瞬既に熱を帯びているであろうファーレンハイトの男性の象徴が見えたが、エリザベートは見てみぬふりをした。
「アード、先にお湯に入ってもいい?」
目の遣りどころに困ったエリザベートは、ファーレンハイトの視線から逃れて風呂に行こうとする。
だが、それはファーレンハイトが腕で阻んできた。
そのまま、壁に身体を押し付けられる。
――これが「壁ドン」とやらか……。
ホーエンツォレルン家のアーカイブで見た地球時代のドラマを思い出しつつ、エリザベートはどこか冷静だった。
だがそれも、ファーレンハイトがキスをしてきたことで終わりを告げる。
口紅の赤がファーレンハイトの唇を彩るのを見て、ゾクリと背中に走るものがある。
――アードがこんなに情熱的な人だった、なんて。
士官学校時代やリップシュタットの戦役以前にも色ごとの噂をさっぱり聞いてこなかったファーレンハイトとはまるで違う彼に、エリザベートは戸惑うしかない。
――いや、もうとうに情熱的だったじゃない。
士官学校時代に自分を嘲って来る者に対して猛抗議をしてくれたり、「金髪の小娘」と揶揄してくる門閥貴族達に対して真っ向から反論したり、挙げ句あのフレーゲル男爵の手から自分を守ってくれた。
――アードは私を、ずっと愛してくれていた。
自分は、その思いに一切気が付かないまま。
今までの自分は、なんて薄情な女だったのだろう、と亡きキルヒアイス元帥の事件のあとに怒涛のように進んだオーディン制圧後のラインハルトのオーディン帰還の行程に従う時にファーレンハイトと交わしあった言葉で実感した。
長い年月で重ねられたファーレンハイトの感情が並ではないのは当然だ。
――だから私も……あなたの想いを、受け入れたいの。
エリザベートは、唇が離れるとファーレンハイトを抱き締めた。
「好きよ、アード」
「俺もだ、シシィ」
寒くなるといけない、と流れるように風呂場に入って湯へと身を沈める。
「アード……」
エリザベートは、ファーレンハイトと向かい合ってキスをした。
そうしてしばらく、お互い温かいお湯を堪能する。
そこでふと、
「シシィ、体を洗い合わないか」
とファーレンハイトに持ちかけられた。
「……えっと、どうしたらいいの?」
「自分がやるようにしたらいいさ」
「そ、そう……では、一度上がりましょうか」
そうして二人は湯船から上がると、ファーレンハイトはそのまま洗い場の椅子に座る。
エリザベートは、ウィンボドナの海で採れた海綿で作ったスポンジでボディソープを泡立てた。
ある程度泡立ったのを確認してから、ファーレンハイトの背に当てる。
「君の香りがするな」
「私が使っている薔薇のボディソープだから、そうでしょうよ」
大きい背中だなぁ、と思いながら体を洗い進めていく。
そして、腕、胸と行く都度オーベルシュタインの如く心を殺す。
上半身が終わる頃、不意にファーレンハイトがエリザベートの腕を掴んだ。
「…………!?!?」
「交代しようか、シシィ」
「え、ええ…………」
そういうことか、と納得してエリザベートは素直にファーレンハイトと場所を交代する。
 「これだと洗いにくいでしょうね」
エリザベートは、苦笑しながら背にある髪を体の前に持った。
「君が前に見せてくれた、ボッティチェリのヴィーナスの誕生を思い出させるな」
ファーレンハイトは、エリザベートの背中の筋に沿って指を滑らせる。
「…………ッツ!!」
だが指が触れたと思ったのは束の間のことで、次には背中を優しくスポンジで洗われる。
「アード……」
「かゆいところはないか?」
「そうね……特にはないわ」
「そうか、ではまたあったら言ってくれ」
ファーレンハイトも、先程エリザベートがやったように丁寧に体を洗う。
……ようにしていたのは、胸に手が行くまでだった。
背後から、胸の先を片方はスポンジで片方は指で洗われる。
「ちょっと……アード……これは洗うってより、触る……じゃない……」
否が応でも、声が零れてしまう。
それに、ファーレンハイトの熱い欲望が背に当たって……。
エリザベートは、ギュッと唇を噛み締めた。
「濡れてしまったんだ、髪も洗ってあげよう」
「……いいえ、自分でできるわ!自分でさせて……」
ファーレンハイトと距離を保ちつつ、クレンジングオイルで化粧を落とした後にシャンプーを取って髪を洗い始める。
――悩殺的でさえあるな……。
一通り体や髪や顔を洗うと、エリザベートはシャワーで泡を洗い落とす。

 春寒うして浴を賜ふ 華清の池
 温泉水滑らかにして凝脂を洗ふ
 侍児扶起こせば嬌として力無し
 始めて是れ新たに恩沢を承くる時

ファーレンハイトは、ホーエンツォレルン家のアーカイブで何度かエリザベートが聞いていた地球時代の古代中国の漢詩を思い出す。
傾国の美女・楊貴妃が初めて中国の皇帝・玄宗に会う前に温泉にて、その肌を洗い清める場面……。
そのシャワーの湯は、滑らかにエリザベートのきめ細やかな肌を洗う。
「シシィ……」
無意識にファーレンハイトは、エリザベートがシャワーを浴びているところに吸い寄せられた。
「アード……」
「綺麗だ……」
そうして、唇を落とす。
エリザベートはファーレンハイトの口付けを受け入れる。
唇を重ねるだけではなく、舌を絡ませ合う深いキス。
「は、あ、ぁっ…………」
「そろそろ……ベッドに行くか?」
ファーレンハイトの申し出に、エリザベートは最早コクコクと首を縦に振るしかできなかった……。

******

だが、それは意外な形で裏切られる。
「そういえば、俺の部屋にはドライヤーがなかったな……。それに、下着も。シシィ、一度部屋に戻って下着を着てからドライヤーをもっておいで。濡れたままの髪では、風邪を引いてしまう」
ファーレンハイトの優しい手つきが、エリザベートを自分の部屋へと送り返した。
こうして部屋に入った途端、
「……アードの部屋に置く用のドライヤーを買おう」
急に冷静になった頭で、そのまま端末を使って新しいドライヤーを通販で注文した。
そうして、たくさんの魔除けの道具や本が積まれている中からドライヤーを発掘する。
すると、ベッドの上に無造作に置かれている例の下着――ファーレンハイト曰く、ベビードールというらしい――が目に入る。
贈られた時には、ありとあらゆる質問が己の胸に去来したが、その時はメックリンガーや学者の友人からもらった本や模型などと共に雑然と箱に入れていた。
それを取り出さざるを得なくなったのは、その箱にバンシーの仮装に使うアイシャドウも入れてしまい、全て中身をベッドの上に広げなくてはならなくなったが故であった。
――着たらいっぱい可愛がってやるんだ……着るだろ?
ファーレンハイトの腰を触る手付きと、骨の髄までも蕩かすような声がフラッシュバックし、エリザベートはギュッと目を閉じる。
そして、バスローブを脱いで手探りでベビードールを身に付けた。
身に付けると、恐る恐る目を開いて姿見で確認する。
――下着の意味、あるのかしら……。
ずれているところを直すと、本来アダムとイブの頃より隠さねばならぬはずの場所が何も隠されていない。
それはつまり……と、この下着の意義を考えてしまい、頬が火照る。
慌ただしくバスローブを着て、ドライヤーとネイルオイルと櫛とヒルダから貰ったヘアオイルをそこらへんに放ったままにしてあったジュートのバッグに適当に入れてファーレンハイトの部屋へと急ぐ。
歩いて一分もかからないはずなのに、この道が永遠に続くように思える。
ようやくたどり着きドアをノックしようとした瞬間、ファーレンハイトがドアを開けてくれた。
「――来てくれて、嬉しいよ」
大好きな声でそんなことを言われたら、ますますファーレンハイトに恋してしまう。
エリザベートは、胸の前で手を組んだ。
「Ich habe mich auch in dich verliebt.(私はまた、あなたに恋をした)」
「シシィ……!!」
ファーレンハイトはエリザベートの手を引き、彼女を部屋に招く。
ファーレンハイトの部屋は元々ゲストルームではあったが、ローエングラム元帥府にて大将に昇進したと共にラインハルトが「いつまでも、仮住まいのアパートメントではな」として恋人たるエリザベートの住むホーエンツォレルン邸へ居を移すことを許可した。
そのため、部屋にはファーレンハイトの物が多く置かれていた。
未だ整理できていない箇所もあるみたいだが、エリザベートの長年の魔除け道具コレクションに溢れた部屋よりかはマシだろうとは思う。
そんな中、今日はベッドの上に自分が好きなローズのポプリがたくさん散らされていた。
「アード……」
「君が安心して私に身を委ねてくれるには、この香りが一番だろうと思ってね。さぁ、早く髪を乾かそう」
こっちに、とソファにエリザベートを座らせて、自分はドライヤーを取り出してエリザベートの髪を乾かしていく。
「どうして私が来るタイミングが分かったの?」
「ドライヤーと、このヘアオイルが当たる音が聞こえていたからね……そこでなんとなく、ドアを開けたんだ」
ファーレンハイトにヘアオイルを上手に施されつつ、エリザベートは納得する。
付き合い始めた直後はファーレンハイト自ら「する」と主張して止まず、仕方なくさせてもちょっと覚束ない様子だったが、最近はとても上手に髪を手入れしてくれるようになった。
それこそ、簪で結い上げるのも手早くしっかりやってくれる。
「アードは、とても器用ね」
ドライヤーをかけられながら、エリザベートは爪にネイルオイルを塗っていく。
「Welche Mühe scheuen Sie, um Ihren geliebten Menschen schön zu machen?(愛しい人が美しくなることに、なんの努力を惜しもうか)」
とんでもない言葉を聞いて驚いたエリザベートは、最後の最後で盛大に塗るコースを外してしまった。
「……アード、なんのつもり?」
「別に何も……?何もないさ」
そう言いつつ、ドライヤーを終えたファーレンハイトは撫でるように手を動かしてエリザベートのバスローブを肩から滑らせた。
「……っあ!」
「ちゃんと着てくれたのか、いい子だシシィ」
吐息交じりに耳元で囁かれて、エリザベートはゾクリと身を震わせる。
「アード…………」
「さて…………どうやってベッドに行きたいかな、Prinzessin(お姫様)」
「あなたはどうなさりたいの、Mein Ritter(私の騎士)」
精一杯、エリザベートは強がってみせる。
すると、ファーレンハイトはエリザベートの前に躊躇うことなく膝を付いた。
「願わくば、あなたの身体を暴き尽くして果ての見えない快楽の海にへと導き奉りたく存じます」
――完敗よ、エリザベート。
斯くまで激しく求められたら、応えぬ方が非道というもの。
エリザベートは差し出されたファーレンハイトの手を取った。
「必ず満足させると、お約束しましょう」
ファーレンハイトは、そのまま流れるようにエリザベートの手首へと口付けた。
そのキスが意味するものは――。

ファーレンハイトとエリザベートは、ベッドの上に座る。
「シシィ……」
「アード……」
そうして、どちらともなくキスをした。
最初は触れ合うだけのキスで、お互いの唇を優しく喰む。
その初々しい音に焦れると、ファーレンハイトは顔の角度を変えてエリザベートの口腔内に少しだけ舌を忍ばせる。
「あ……」
不意をつかれて息を漏らしたその瞬間、ファーレンハイトはガバリとエリザベートの唇に食らいついた。
「ん、んーーっ!」
そのまま、ファーレンハイトがエリザベートの舌を呼吸ごと絡め取る。
「……あ、あぁ……」
頭がぼうっとして、ファーレンハイトの腕を掴んでいた手の力が抜けてしまった。
それを見逃さないといったように、ファーレンハイトはエリザベートのバスローブを器用に剥ぎ取ってしまう。
そして、ドサリとベッドに押し倒される。
「はぁ……はぁ……」
ようやく呼吸がまともにできると思ったのも束の間、ファーレンハイトは覆い被さって再び口付けを求めてきた。
帝国の言語では口付けのことを「Kuß(クス)」、そして地球時代の言語・フランス語では「baiser(ベーゼ)」というらしい。
――これは多分、baiserね……。
舌先と舌先を繋ぐ唾液の銀の糸が、挨拶の口付けではないと知らしめる。
「あ、アード……」
「あの謹厳な黒の軍服で……こんな厭らしい身体を包んでいるなんて、あの服は罪な服だな」
ファーレンハイトは、エリザベートの腰に触れる。
「そんな……帝国の軍服に、罪はないでしょう」
「そうだな、ならこんな厭らしい身体をしているシシィが罪だな……お仕置きが要りそうだ」
お仕置き……と聞いてエリザベートが身構えていると、ファーレンハイトはベビードールの隙間から露出しているエリザベートの胸の突起に唇を寄せた。
「アード…………」
「この下着、よく似合っている。……選んだ甲斐があったというもの」
「でもこれ……普段には……」
「シシィは普段使いの下着が欲しいのか?なら今度買ってあげよう。……だが、また違うベビードールを着せるのもいいか」
今回は黒だから、次は赤とかもいいかもしれないなと呟いてからエリザベートの胸の突起を口に含んだ。
「あ、ぁっ…………!」
大好きな声を紡ぐ唇が、舌が、自分の胸の突起を愛撫する。
目を閉じながら懸命に吸い付くその姿は、さながら乳を求める子のようでもある。
本能的ともいえるように、エリザベートはファーレンハイトの頭を撫でる。
すると、もう片方の胸の突起を指で摘まれた。
「ひぅっ…………」
舌とは違うリズムで指の腹を使って突起を優しく捏ねられ、指と唇のどちらの愛撫に集中するばよいのか分からなくなる。
ペンを持ち、指揮を下す指が、指令を出し、言葉を紡ぐ唇が、エリザベートの身体を……。
「アード……」
熱い吐息と共に、彼の名前を呼ぶ。
「シシィ……」
ようやく胸の突起から唇を離したファーレンハイトは、再びエリザベートとキスをする。
「そろそろ……だろうな」
そう言ってエリザベートの肌に指を這わせ、その指はゆっくりと胸の突起、腰へと徐々に下降していく。
「アード……」
この先にされるであろうことを想像したエリザベートは、ふるりと身を震わせる。
「あぁ……こんなに濡らして……分かるかシシィ?」
秘められた場所にファーレンハイトの指が至り、耳元で甘く囁かれた。
「や、やぁっ…………!」
「ほら、また溢れてきた……シシィは本当に俺の声に弱いな……。このままもっと溢れさせてしまおうか……俺の指が溶けてしまうほどに」
秘められた花芯を暴かんとするべく、ファーレンハイトは指でそこを愛撫する。
「アード…………!」
「かわいいな、シシィ」
エリザベートの右手と自身の左手の指を絡め合わせる。
キスを交わして、エリザベートの身体の力を抜いていく。
そうして、抵抗なくエリザベートの脚を開かせた。
「……いやっ……!そんな、見ちゃだめ……」
「そうだな……俺以外には絶対に、見せるなよ。こんな厭らしくて、綺麗なところ」
ファーレンハイトは、絡め合わせた指を解いてからエリザベートの太ももに吸い付いた。
「……っあ!」
「痕は残さないさ……この綺麗な肌には似合わないからな。……あぁ、もう……びしょびしょ、だな」
エリザベートの蜜壺から溢れ出る蜜を掬って、指を動かす。
艶かしく糸を引くそれに、ファーレンハイトは思考回路を溶かされてゆく。
――もっともっともっと、シシィに色々教えてやりたい。
吸い寄せられるようにして、ファーレンハイトは蜜壺に唇を近付けた。
赤く熟れた花芯を、口に含む。
「あ、アード……!そんなこと、しちゃだめぇ……」
恋人になって以降、まだ両の指で足りる程の交合しかしていないエリザベートにとって、そのファーレンハイトの行動は信じられないものだった。
「あっ…………あっ…………!」
舌からの刺激は、エリザベートの身体に今までファーレンハイトが教え込んできた「快楽」を呼び覚まさせんとするものだった。
美しいエリザベートに、もっとファーレンハイトを求めて欲しいという……独占欲とも支配欲とも言える、この感情。
――どうか俺を、もっと愛してくれ。
ファーレンハイトは、解れてきたと見たエリザベートの蜜壺にそっと指を差し入れる。
「…………っつ、あっ…………」
ゆっくりと蜜壺を拡げられる感覚に、エリザベートは震えた。
何度も何度も「これは『気持ちいい』だ」と、耳元で優しく教え込まれたこの身体は、とても快楽に素直なものであり。
「あぁっ…………!」
ビクリと身体をしならせて果ててしまうエリザベートに、ファーレンハイトは愛おしさを更に募らせる。
――俺なしでは生きられなくさせてやりたい……。
愛する人には、いつまでも生きていて欲しいと願うのが通常の思考だろう。
だが、ファーレンハイトは違った。
自分が死ぬなら、エリザベートも死を共にして欲しいという暗い暗い願望があった。
もちろん、そう簡単に死ぬつもりなど一切ないが……この戦争中に、いつ何が起こるかは分からない。
しかし、死が二人を分かつことなど許さない。
ヴァナディース……フレイヤとオーディンが死者を分け合うなら、自分はエリザベートのいる方に行こう。
それが例えヴァルハラでなくとも。
いや、そもヴァルハラというのは……。
ホーエンツォレルンのアーカイブやエリザベートの部屋にある魔除け道具のコレクションを見れば、それを信じる者のみがこの世界にいるという訳でないと教えてくれる。
しかし確信はある。
どこへ行こうとも、そばにはエリザベートがいてくれるのだということが……。
「シシィ……」
すっかり解れた蜜壺から、ファーレンハイトは指を抜く。
「アード……あなたも、気持ちよくなって……」
ファーレンハイトに乱されているエリザベートは、世界で一番美しい女性だった。
「ああ……そうさせてもらおう……」
「アード……もっとあなたに触れたいの……」
そう言われて、はたとファーレンハイトは考え込む。
自分とエリザベートの間には、もう何も隔たりはないはずなのに……。
と、そこでエリザベートが自分のバスローブの裾を軽く引っ張ったのに気付く。
――ああそうか、そういうことか。
「シシィはかわいいな」
ファーレンハイトはエリザベートの手を取って、自らのバスローブの紐へと導く。
そうして、上手いこと指先に紐を絡めさせてバスローブを脱がせる。
「あ……」
エリザベートはファーレンハイトの肌が見えるまで失念していた。
自らの身体を貫くそれが、見えてしまうということに。
――アードのが……私に……。
自分の蜜壺を貫いて、快楽を貪り、自分だけにしか見せない顔を見せてくれる瞬間の……。
はしたないと思いつつも、自らもファーレンハイトを求め、またファーレンハイトを快楽に溺れさせたいと思う自分も同時にいた。
初めての時は「アード、入らないから……」と、拒みつつも貫かれたのが最早懐かしいことのように思えてくる。
「では……遠慮なく、気持ちよくさせてもらおう」
ファーレンハイトはエリザベートと口付けを交わす。
そうして、エリザベートの蜜壺へと己の欲望を埋めていく。
「あ、ああっ…………!」
毎度指よりも更に太いファーレンハイトの欲望を受け入れる際に、エリザベートの蜜壺はこれでもかというほど拡げられる。
――母上は、兄上や私や弟を産む時……。
なるほど出産は命がけというのがよく分かる、と全て受け入れた時の圧迫感で思い知った。
「シシィ……全部、入ったぞ」
「ほ……本当に……?」
「――ああ、本当に」
ファーレンハイトはエリザベートの指を結合部へと誘う。
するりと自分の肌とファーレンハイトの肌の間を指でなぞり、そこには数寸の距離もない事を確認する。
「私、またアードを受け入れられたのね」
「ああ……ぴったりと、俺の形に馴染んでる。下着を着たまま入れられると、興奮するか?」
「ごめんなさい、よく分からないわ……。でも、アードが……喜んでくれるなら、私も」
いじらしい言葉を返すエリザベートに、ファーレンハイトの欲望はドクリと大きさを増す。
「アード……?どうして大きく……?」
「シシィがあまりに可愛くてな……そろそろ動くぞ」
一言断ってから、ファーレンハイトは身体を起こしてエリザベートの腰を持つ。
「あ、あっ…………」
「遠慮なく声を出せ、シシィ」
ゆっくりと欲望を抜き差しされて、エリザベートの蜜壺は圧迫と開放を短いスパンで繰り返させる。
「う、うぅっ…………!」
快楽とファーレンハイトの欲望の出し入れをより滑らかにするために、蜜壺は蜜を止めどなく溢れさせる。
「――声を抑えないで、シシィ」
上半身を傾けられ、耳元で縋るような声で囁かれて優しくキスをされる。
それと同時に、ファーレンハイトの欲望は一度ギリギリまで蜜壺から抜けていく。
その虚しさに身を震わせたのも一瞬、次には一息に蜜壺の奥まで挿入された。
「あ、あ……!いやっ、これいやっ…………だめ、だめぇ……!イッちゃうからぁぁっ!!」
いきなりの刺激に声を抑えられなくなったエリザベートは、じたばたと身体を動かす。
「ぁぁっ…………!」
止まることのない絶頂が怖くて、エリザベートの目から涙が溢れる。
「……まだ気持ちよくなれるだろ?」
その様子を壮絶な色気を纏って見ていたファーレンハイトは、エリザベートを抱え上げた。
「や、あっ……だめだめだめだめ……!!」
「この体位も気持ちいいだろう?」
快楽が強すぎて逃れようとしてもファーレンハイトにしっかり抱き締められて、すぐに蜜壺はファーレンハイトの欲望を受け入れさせる。
その度に、蜜壺の一番奥とファーレンハイトの欲望がキスをするように擦れ合う。
「どうなんだシシィ?」
「アード……!助けてアード…………!怖いのぉ…………!」
「そうか、気持ちよすぎて怖いかっ……」
「………………ッツ………………!!」
ファーレンハイトは、エリザベートの腰を掴んで身体を揺すり続ける。
「いやぁぁぁっ…………!」
ファーレンハイトの首に抱きつきながら、エリザベートは何度も絶頂する。
「――シシィ…………」
そのまま、ファーレンハイトはベッドの上へと上半身を沈めた。
「……や、やぁっ……角度がっ……!」
「この騎乗位は……やることは乗馬と一緒……いい子のシシィなら、できるだろ?」
「で……でも……」
「なら、悪い子の罰として……このまま抜くしかないな……」
ファーレンハイトは、エリザベートの腰を持って勿体ぶりながら自身の欲望を抜いていく。
「いやっ……抜いちゃだめぇ……!」
「なら、いい子のシシィは自分でも動けるよな……?」
返事をする前に、エリザベートは蜜壺の中にファーレンハイトの欲望を再び迎え入れた。
「やぁぁぁっ!」
「……っあ……!今のは……締まるッ……!イキそうだ……!っつ、シシィ……!」
ファーレンハイトは、エリザベートの腰を持ちながらエリザベートの蜜壺の中で果てる。
熱い熱い欲望の飛沫が蜜壺で散るのを、エリザベートは朧気に感じる。
「あんっ……アード……まだ出てる……」
エリザベートは、ファーレンハイトの逞しい胸板に身体を預けた。
「君がウィンボドナに行った以来のSEXだからな……多いだろうさ……次は一緒にイこうか」
「ま、まだするの……?」
「残念だが、今日シシィを寝かせるつもりはないぞ」
その証左のように、ファーレンハイトの欲望はたちまち熱を取り戻す。
「うそ、もう元気になるの……?」
エリザベートは、蜜壺の圧迫感が再び強まったのを感じて身を震わせる。
「さぁシシィ……動いて」
「ああっ…………」
「自分で気持ちよくなってごらん」
ファーレンハイトの甘く意地悪な命令に、エリザベートは自然と従ってしまう。
ファーレンハイトの動きを思い出して、自らの腰を動かす。
ファーレンハイトは、エリザベートの媚態に満足そうに目を細めた。
――こんなシシィを知るのは、この世で俺だけ。そしてシシィの蜜壺に受け入れさせる男はシシィが死ぬまで、俺だけ……。
ファーレンハイトは、エリザベートにキスをしたくなって身を起こした。
「アード……」
「ありがとうシシィ……愛している……」
「私もよアード、あなたのこと……大好きよ……」
恋人たちは、その言葉を自分たちだけで封じるかのように口付けを交わす。
「そろそろ、もう一度イカせてやろう……」
ファーレンハイトはエリザベートを再び押し倒した。
バラの香りが、恋人たちの鼻をくすぐる。
「アード……」
「シシィ……!」
蜜壺のその先更に奥に奥にと目指すような激しい抜き差しを、ファーレンハイトはする。
エリザベートは、それに悲鳴のような声を上げて身悶える。
「……っ!イク……イクっ……シシィ……!」
「アード……!アードっ……!好き、好きっ……!」
蜜壺の激しい締め付けに誘われ、ファーレンハイトは奥の奥で欲望を開放する。
恋人たちは、お互いの震える身を抱き締めた。
そして、優しく唇を重ねる。
呼吸が落ち着くと、
「汗と涙で、ひどい顔だな……」
「お互い様じゃないかしら……」
と、苦笑いし合う。
「シシィ……」
「アード……」
恋人たちは、額を寄せ合った。
「愛してる」
その言葉は、ハロウィンの夜の中に吸い込まれていった……。


――翌朝。
今日は二人とも非番だったので、少し遅めに起きた後にゆっくりと朝食を取っていた。
今日の朝食のメニューは、かつてのトルコ国のメネメンという玉ねぎやトマト、ピーマンが入ったスクランブルエッグと、スライスチーズとサラダ、塩漬けオリーブ、ライ麦パン、そして紅茶だった。
元々食べるために軍人になったファーレンハイトからしたら、その豪華な朝食ですら辟易するものではある。
それに加えて、ホーエンツォレルン家は「歴史を守る家」としての家訓に倣って地球時代にあった様々な国の料理をできるだけ残そうと食に大いにこだわっているのもあり、毎日異なる毛色の食を出していた。
――そりゃ毎日こんな感じなら、食べる専門になるよな。
ファーレンハイトは、美味しそうにメネメンを食べているエリザベートを見て思う。
「……どうしたのアード?」
「いいや……シシィは食べる姿も可愛らしいなと思ってな」
「そ、そう……」
「この先、毎日ずっとこうしていられたら……とね」
ファーレンハイトは、出過ぎた夢だな……と自嘲気味に付け加える。
「そうね……。でもそれが一番だから、早く戦争は終わらせた方がいいでしょうね。元帥閣下の下で、これからも頑張りましょう」
「そうだな……ああ、そうだ」
その先には、きっと今日のような穏やかな日があると願って。
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