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Fate/The Knight of The Blue Carbuncle~千年古都と幻の聖杯~

「ホームズとそのマスターは、月読様と天照様が責任を持って現世に戻しました」
春水と政は、アルテミスに連れられて冥界の道を歩いていた。
「……そういえば、あなたは期せずして京聖杯の力を手にしていましたね」
「??」
「――いいや、朕はあくまでも天照大神の結界を使用したのみ。それ故、天照大神がその体から抜けた今……春水にその力はない。現世に戻っても、何ら変わらぬ。ただ、朕と共に時を過ごすのみ……仮に、其方が此処から現世に帰っても、それは変わらぬ」
「――畏れながら……私は、もう二度と現世には帰れませぬ」
アルテミスの答えに、政はさして驚かなかった。
「そうか、なに……其方のことだ、先程の口ぶりからしても……神々やどこかに何らかの交渉の切り札を有しておるのだろう」
「――それでこそ、あなた様でございます」
「アルテミス=アスクレーピオ、その忠義……一番の大儀なり」
「陛下、その御言葉だけで……私は十分でございます」
アルテミスは、門の直前で跪いた。
「――いってらっしゃいませ、春水様、政様……よき、旅を」
「アルテミスさん……ありがとうございました」
「――大儀である、春月君!大儀である、アルテミス!大儀である、一番の……功労者よ。さらば、“また”会おう」
「……!!ええ、“また ”……」
政は、春水と共に門を通り抜けた。

******

――夜明け前。
ホームズと自分は、京都駅にて別れの言葉を交わしていた。
お互い、未練はなかった。
「――君が今回の聖杯戦争の勝者だ。それは、間違いなく誇っていいことだ」
「ありがとうホームズ、私を助けてくれて」
「今回、僕を助けてくれた青ガーネット……人間の可能性が、道を指し示してくれただけさ」
ホームズは青いガーネットで自分を包んでくれた。
「温かい……ありがとう。あなたに会えて……よかった」
「今回の聖杯戦争は、なかなかに楽しめたよ。暇つぶしには……」
「え、暇つぶしくらいだったの……」
「――冗談だ。素晴らしい……謎だったよ。またいつかどこかで、君と会おう」
ホームズは最後に自分の手の甲に口付けをして、英霊の座に帰っていった。


――それは初雪が降った、静かな朝だった。


【Fate/The Knight of The Blue Carbuncle~千年古都と幻の聖杯~/完】
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