Fate/The Knight of The Blue Carbuncle～千年古都と幻の聖杯～
今日は土曜日で何もなかったので、昼くらいに起きて岡崎にある府立の図書館に行って画集を見に行く。
「マスター、僕もしばらく調べ物をしたいから図書館内は別行動でいいかい？」
「いいよ、四時くらいに集合でいいかな？」
「構わない」
そうして、それぞれ別行動に入る。
美術史の本を漁っていると、ふと人の気配を感じて顔を上げた。
――……！！
すると同世代らしき女性が手に令呪を宿していて、誰かのマスターであることが分かった。
「……待って……！！」
彼女を追いかける。
しかし、階段を上りきったところで見失ってしまった。
「体力のなさが、ここで仇になるか……！！」
仕方なく、諦めて資料探しの作業に戻った……。
――夜。
最寄り駅の近くのファミレスでご飯を食べた後、家に帰る途中にホームズと話していると、突如黒い影が襲ってきた。
「……！！」
ホームズは、とっさに刀を作ってその一撃を受ける。
「――へぇ……僕の一撃を、避けれるの」
黒い影は黒の着物を着た一人の青年であることが、離れた時に初めて分かった。
「マスター、下がって」
「それより自分の心配をしなよ！！」
青年は脅威的な速さで突きを繰り出してくる。
――相当な剣術使いのサーヴァント……クラス的にはアサシンか？
一撃一撃を受けながら、ホームズは彼の正体を探る。
「――セイバーなのに、君……自分の獲物を使いこなせてないみたいだね。なにそれ……燐じゃないよね？燐なら燃えるか……」
――作り出せるならば、もしかしたら形を変えることも可能か？
ホームズは、二刀流ができないかと思い描く。
すると、もう片方の手にも刀を生成することができた。
「……！！」
「ふーん……でも、何本あっても同じだよ」
青年は、再び強力な突きを繰り出してきた。
ホームズはその突きを刀で受ける。
――3回……。
刀に当たる音の回数を数えた後、ホームズは青年の腹に蹴りを入れた。
「……が、っは……」
「――新選組、沖田総司」
「……！！」
ホームズが正体を言い当てた瞬間、青年……沖田総司が着ていた黒の着物は、皆がよく知るような“だんだら模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織”へと変化した。
「お前……お前……！！！マスターの隠匿の術を破りやがって……！！」
「――このまま戦ってもいいが、その体で持つかな……？」
ホームズは、突きに特化したレイピアへと武器の形を変化させる。
「お前……絶対殺す！！」
沖田は体に殺気を漲らせて立ち上がった。
「――生憎、死ぬつもりもないが君を見逃すほどの慈悲もなくてね」
ホームズは、レイピアを構える。
「だったら、黙って僕の戦績に加えられろ……！！」
沖田は平正眼に構えてから踏み出す。
まさに突きが交錯する寸前……。
「――失礼した、我が隊員が迷惑を」
同じ新選組の隊員と思わしき浅葱色の羽織を着た男が沖田に吹き矢を使って気絶させたらしく、沖田は崩れ落ちた。
「……君は……」
「バーサーカー・土方歳三の一角、新選組の三番組組長……斎藤一。近いうちにマスターから大仕事を仰せつかっていて、偵察だけと言われたのに沖田は……まぁ、そこが彼の強いところでもあり、弱いところでもあるが」
斎藤は、よいしょ……と沖田を抱え上げた。
「――その剣、可変なところを見ると十分に活かせていない様子なのが惜しいところだ。……俺と戦う時は、せいぜい“一瞬”で勝負がつくことがないように祈ってるぜ」
最後にゾッとするような笑みを見せてから、斎藤は姿を消した……。
――賀陽院家邸。
「――美しい月だ」
「中国では、うさぎが薬を混ぜている姿なのでしたっけ」
政の言葉に、春水は思い出したように言う。
「日本では、うさぎが餅をついているのだったか」
「ある国はカニだったり……色々違って、面白いですよね」
「そうだな、あんなに一つの場所で様々な国の人と会うとは初めてだ」
政は、つい数時間前に春水が大家である留学生向けマンションでのパーティーに参加していた。
「何かお気に召さない点でもありましたか……？」
「――いいや、私が望んで参加したのだ。実に興味深かった……さすが学生の街、ともいわれるだけある」
「私も、小さい頃からその学生の人からいろいろ教えてもらって、世界の様々な文化に触れるのが楽しいと知ったんです」
「なるほど、だから蓋碗の中の茶の具合も把握しているというもの」
「お褒めに預かり、光栄です」
「素晴らしい白毫銀針の茶葉だ……手に入れるのは苦労しただろう」
「京都にある……あらゆるお茶屋を巡るのが、趣味な所もありますので……」
「――なるほど、さすが京都だな」
政は、嬉しそうにお茶請けの蜜棗を口にする。
「恐れ入ります」
「いや、それでも春水のセレクトが素晴らしいのが大部分だろうよ」
「師匠である祖父も、喜んでいましょう」
「ならば挨拶に行かねばなるまい、春水の両親にも……」
「あの……この邸には、もう私しか住んでおりません……」
「……気を悪くしたならば、謝ろう」
政は申し訳なさそうな顔をした。
「いいえ、人は必ずいつか死ぬものです。だからこそ、祖父母も両親も私に命を繋いでくれたのでしょう」
「……そうだな」
政は、そう言って月を見上げる。
「――ああ、そうなのだろうよ」
その言葉は誰にも聞こえなかった。
「マスター、僕もしばらく調べ物をしたいから図書館内は別行動でいいかい？」
「いいよ、四時くらいに集合でいいかな？」
「構わない」
そうして、それぞれ別行動に入る。
美術史の本を漁っていると、ふと人の気配を感じて顔を上げた。
――……！！
すると同世代らしき女性が手に令呪を宿していて、誰かのマスターであることが分かった。
「……待って……！！」
彼女を追いかける。
しかし、階段を上りきったところで見失ってしまった。
「体力のなさが、ここで仇になるか……！！」
仕方なく、諦めて資料探しの作業に戻った……。
――夜。
最寄り駅の近くのファミレスでご飯を食べた後、家に帰る途中にホームズと話していると、突如黒い影が襲ってきた。
「……！！」
ホームズは、とっさに刀を作ってその一撃を受ける。
「――へぇ……僕の一撃を、避けれるの」
黒い影は黒の着物を着た一人の青年であることが、離れた時に初めて分かった。
「マスター、下がって」
「それより自分の心配をしなよ！！」
青年は脅威的な速さで突きを繰り出してくる。
――相当な剣術使いのサーヴァント……クラス的にはアサシンか？
一撃一撃を受けながら、ホームズは彼の正体を探る。
「――セイバーなのに、君……自分の獲物を使いこなせてないみたいだね。なにそれ……燐じゃないよね？燐なら燃えるか……」
――作り出せるならば、もしかしたら形を変えることも可能か？
ホームズは、二刀流ができないかと思い描く。
すると、もう片方の手にも刀を生成することができた。
「……！！」
「ふーん……でも、何本あっても同じだよ」
青年は、再び強力な突きを繰り出してきた。
ホームズはその突きを刀で受ける。
――3回……。
刀に当たる音の回数を数えた後、ホームズは青年の腹に蹴りを入れた。
「……が、っは……」
「――新選組、沖田総司」
「……！！」
ホームズが正体を言い当てた瞬間、青年……沖田総司が着ていた黒の着物は、皆がよく知るような“だんだら模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織”へと変化した。
「お前……お前……！！！マスターの隠匿の術を破りやがって……！！」
「――このまま戦ってもいいが、その体で持つかな……？」
ホームズは、突きに特化したレイピアへと武器の形を変化させる。
「お前……絶対殺す！！」
沖田は体に殺気を漲らせて立ち上がった。
「――生憎、死ぬつもりもないが君を見逃すほどの慈悲もなくてね」
ホームズは、レイピアを構える。
「だったら、黙って僕の戦績に加えられろ……！！」
沖田は平正眼に構えてから踏み出す。
まさに突きが交錯する寸前……。
「――失礼した、我が隊員が迷惑を」
同じ新選組の隊員と思わしき浅葱色の羽織を着た男が沖田に吹き矢を使って気絶させたらしく、沖田は崩れ落ちた。
「……君は……」
「バーサーカー・土方歳三の一角、新選組の三番組組長……斎藤一。近いうちにマスターから大仕事を仰せつかっていて、偵察だけと言われたのに沖田は……まぁ、そこが彼の強いところでもあり、弱いところでもあるが」
斎藤は、よいしょ……と沖田を抱え上げた。
「――その剣、可変なところを見ると十分に活かせていない様子なのが惜しいところだ。……俺と戦う時は、せいぜい“一瞬”で勝負がつくことがないように祈ってるぜ」
最後にゾッとするような笑みを見せてから、斎藤は姿を消した……。
――賀陽院家邸。
「――美しい月だ」
「中国では、うさぎが薬を混ぜている姿なのでしたっけ」
政の言葉に、春水は思い出したように言う。
「日本では、うさぎが餅をついているのだったか」
「ある国はカニだったり……色々違って、面白いですよね」
「そうだな、あんなに一つの場所で様々な国の人と会うとは初めてだ」
政は、つい数時間前に春水が大家である留学生向けマンションでのパーティーに参加していた。
「何かお気に召さない点でもありましたか……？」
「――いいや、私が望んで参加したのだ。実に興味深かった……さすが学生の街、ともいわれるだけある」
「私も、小さい頃からその学生の人からいろいろ教えてもらって、世界の様々な文化に触れるのが楽しいと知ったんです」
「なるほど、だから蓋碗の中の茶の具合も把握しているというもの」
「お褒めに預かり、光栄です」
「素晴らしい白毫銀針の茶葉だ……手に入れるのは苦労しただろう」
「京都にある……あらゆるお茶屋を巡るのが、趣味な所もありますので……」
「――なるほど、さすが京都だな」
政は、嬉しそうにお茶請けの蜜棗を口にする。
「恐れ入ります」
「いや、それでも春水のセレクトが素晴らしいのが大部分だろうよ」
「師匠である祖父も、喜んでいましょう」
「ならば挨拶に行かねばなるまい、春水の両親にも……」
「あの……この邸には、もう私しか住んでおりません……」
「……気を悪くしたならば、謝ろう」
政は申し訳なさそうな顔をした。
「いいえ、人は必ずいつか死ぬものです。だからこそ、祖父母も両親も私に命を繋いでくれたのでしょう」
「……そうだな」
政は、そう言って月を見上げる。
「――ああ、そうなのだろうよ」
その言葉は誰にも聞こえなかった。
