SSのログ
「愛、それは甘く 愛、それは強く
愛、それは尊く 愛、それは気高く」
エリザベートは、ホーエンツォレルン家の膨大なメディアアーカイブの中にある歌劇に合わせて歌い踊る。
この演目は、かつての地球時代にあったフランス国の王朝が革命によって滅び去る時代が舞台であり、その中で生きた人々のトラジェディーである。
――when we are born,we cry tha we are come
To this great stage of fools.(人は生まれ落ちるやいなや、この阿呆ばかりの大舞台に上げられたのが悲しくて、誰もが大声あげて泣き叫ぶ。)
……とは、はてさて誰の劇作家の言葉だったか。
エリザベートにとって、演劇とは「自らの立ち振る舞いを教えてくれる」場でもあり、「自分ではない誰かの人生を楽しませてくれる」場でもあった。
中でも、このフランス革命の演目は好きすぎて、すっかり台詞も歌も踊りも覚えてしまっている。
ここの劇団は男性役も女性が男装した姿で演じ、女性のみで演じられるものだった。
小さい頃に、この男装の麗人を見たら……もう、お察しというもの。
画面の向こうの彼女のようになりたくて、立ち振る舞いや話し方、更には父やメルカッツ提督から直接戦術を教わり……。
気付けば、皇帝の召出しすらも断って、帝国史上初の女性士官になっていた。
メルカッツ提督から賜った乗艦のヴァナディース共に、その部隊の高速性を活かして縦横無尽に戦場を行き来する。
アスターテの時も、メルカッツ提督の下に配属されて同盟軍にかじりついた。
アムリッツァの時も、リップシュタットの時も……敵に、痛い一撃を与えたはずだ。
――シュナイダー、提督をお願いね。
自分よりも、ずっとずっと生きていて欲しいと願ったメルカッツ提督を、同盟へと亡命させる手引をしたのを、何ら後悔していない。
生きていてくれたら、何も言うまい。
一通りそのトラジェディーが終わったので、ふと部屋を見る。
そこには、いつの間にか部屋の壁に背を預けていたファーレンハイトがいた。
「…………え…………アード…………?いつから…………そこに…………?」
「……そこの燭台を、持ったときくらいから」
「え、それほぼ全部じゃない?」
あるべき場所にない燭台を見て、意味を察したエリザベートの顔が一気に赤くなる。
「ふふ、顔が赤いぞ……」
ファーレンハイトは、エリザベートと距離を縮めてきた。
「あ…………」
そのまま、優しくしっかりと抱き締められる。
「全然気付かなかったから、少し画面の向こうの登場人物たちに嫉妬してしまいそうになった」
「あら、彼らはご覧になったら分かるでしょうけど最後には恋人になるの」
「それは知っているさ……だが、君が俺に一切気付かないというのを見ると同性でも……」
腕の力が強まり、少し苦しくなる。
「大丈夫よアード……私には、あなただけ」
エリザベートは、背伸びをしてファーレンハイトの唇にキスをする。
そのまま何度か唇だけ触れ合う。
リップ音が、お互いの心を昂ぶらせていく。
「シシィ……君が欲しい」
「アード……………………」
どう答えるかは、もう決まっている…………。
愛、それは尊く 愛、それは気高く」
エリザベートは、ホーエンツォレルン家の膨大なメディアアーカイブの中にある歌劇に合わせて歌い踊る。
この演目は、かつての地球時代にあったフランス国の王朝が革命によって滅び去る時代が舞台であり、その中で生きた人々のトラジェディーである。
――when we are born,we cry tha we are come
To this great stage of fools.(人は生まれ落ちるやいなや、この阿呆ばかりの大舞台に上げられたのが悲しくて、誰もが大声あげて泣き叫ぶ。)
……とは、はてさて誰の劇作家の言葉だったか。
エリザベートにとって、演劇とは「自らの立ち振る舞いを教えてくれる」場でもあり、「自分ではない誰かの人生を楽しませてくれる」場でもあった。
中でも、このフランス革命の演目は好きすぎて、すっかり台詞も歌も踊りも覚えてしまっている。
ここの劇団は男性役も女性が男装した姿で演じ、女性のみで演じられるものだった。
小さい頃に、この男装の麗人を見たら……もう、お察しというもの。
画面の向こうの彼女のようになりたくて、立ち振る舞いや話し方、更には父やメルカッツ提督から直接戦術を教わり……。
気付けば、皇帝の召出しすらも断って、帝国史上初の女性士官になっていた。
メルカッツ提督から賜った乗艦のヴァナディース共に、その部隊の高速性を活かして縦横無尽に戦場を行き来する。
アスターテの時も、メルカッツ提督の下に配属されて同盟軍にかじりついた。
アムリッツァの時も、リップシュタットの時も……敵に、痛い一撃を与えたはずだ。
――シュナイダー、提督をお願いね。
自分よりも、ずっとずっと生きていて欲しいと願ったメルカッツ提督を、同盟へと亡命させる手引をしたのを、何ら後悔していない。
生きていてくれたら、何も言うまい。
一通りそのトラジェディーが終わったので、ふと部屋を見る。
そこには、いつの間にか部屋の壁に背を預けていたファーレンハイトがいた。
「…………え…………アード…………?いつから…………そこに…………?」
「……そこの燭台を、持ったときくらいから」
「え、それほぼ全部じゃない?」
あるべき場所にない燭台を見て、意味を察したエリザベートの顔が一気に赤くなる。
「ふふ、顔が赤いぞ……」
ファーレンハイトは、エリザベートと距離を縮めてきた。
「あ…………」
そのまま、優しくしっかりと抱き締められる。
「全然気付かなかったから、少し画面の向こうの登場人物たちに嫉妬してしまいそうになった」
「あら、彼らはご覧になったら分かるでしょうけど最後には恋人になるの」
「それは知っているさ……だが、君が俺に一切気付かないというのを見ると同性でも……」
腕の力が強まり、少し苦しくなる。
「大丈夫よアード……私には、あなただけ」
エリザベートは、背伸びをしてファーレンハイトの唇にキスをする。
そのまま何度か唇だけ触れ合う。
リップ音が、お互いの心を昂ぶらせていく。
「シシィ……君が欲しい」
「アード……………………」
どう答えるかは、もう決まっている…………。